2018年が明けて早々に噴火した草津白根山(群馬県草津町)は24時間監視対象の活火山だったが、動き出したのは、同山に3つある峰のうち約3000年間噴火歴がなく監視対象外になっていた本白根山だった。しかも噴火の前兆である地震や噴気などの活動がなく専門家らも不意を突かれたもので、火山は警戒レベルに関わらず「いつ噴火してもおかしくない」ということを知らしめた。14年9月にはやはり前兆がないまま、長野、岐阜両県境にある御嶽山が噴火した。
『衛星画像で読み解く 噴火しそうな日本の火山』(日本評論社)は、気象庁が24時間体制で常時監視の対象にしている火山と、常時監視対象外ながら活動的な山々について、米地球観測衛星ランドサットのカラー画像を使い解説した「日本初」という図鑑。それぞれの山をデータ別に色分けされた4枚の画像を使って解説されている。草津白根山については「万座温泉南東の本白根山では2014年4月頃から火山性の地震が度々観測され、警戒レベルが引き上げられた。注意が必要な火山である」とある。
気象庁による常時監視対象の火山は47山。本書では、八丈島、青ヶ島、小笠原・硫黄島を除く44山を取り上げた。ほかに、知床半島火山群の硫黄岳と羅臼岳、青森県の恐山と八甲田山、栃木・高原山、群馬・榛名山、富山・立山、島根・三瓶山、鹿児島・開聞岳、北方領土・国後島の爺爺岳を収録。これらの山々は、常時監視対象外ながら噴気や小規模な水蒸気爆発、火山性微動が観測されているという。爺爺岳のデータ画像が見られるのは衛星画像ならではか。
それぞれの火山は、実写図である「トゥルーカラー」画像1枚と、センサーの観測データを画像化した「フォールスカラー」画像3枚を使って、同じ領域を紹介。3枚のフォールカラー画像では、植物の分布、地表の熱分布、溶岩や火成岩などの火山系噴出物の状況が分かるよう示されている。雌阿寒岳や十勝岳など北海道の山々から日本列島を南下するように読み進めていくとしだいに画像の見方が分かってくる。
各地で噴火があると「大丈夫か?」と注目される富士山。遠望では分からない、1707年の噴火跡である宝永火口の広がりが見える。静岡・御殿場の街に意外に近い。
静岡・伊豆半島の伊豆東部火山は14年7月頃から、半島の東方海域で火山性地震が多発し観測が強化されつつあるという。同火山は、観光地となっている大室山、天城山、遠笠山などで構成される。トゥルーカラーでもフォールスカラーでも、大室山がプリン形にくっきり浮き出ているのが印象的だ。
熊本の阿蘇山は周囲68キロメートルの広大なカルデラ。本書では中央火口一帯の画像を収録している。しばしば活動を活発化させており、画像は「警戒レベル3」のときのもので、火口内にマグマが噴出している様子などが分かる。いずれの画像でも草千里がなぜかドクロマークのように見え、火口よりそちらに目を奪われてしまう。
本書の著者、科学ジャーナリストの福田重雄さんによると、日本の火山は2011年3月の東日本大震災以後、不安定期に入っており、それは日本列島に限ったことではなく極東アジア全域にいえるという。草津白根山や御嶽山の例が示したように噴火予知は困難であり、福田さんは、本書収録の画像により「視覚的に火山の実態を読み解くことが重要」と述べる。
世界の活火山の約7%が日本にあるとされ、それらとの共生の重要性がしばしば強調されている。本書の解説、画像データからは、温泉や地熱について情報が得られるほか、別荘地や観光地の多くが火山の山麓にあることから、そられの土地の成因に関心を払うことの重要性などがよくわかる。
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