天皇陛下の退位の御意向を受けて2019年4月30日で平成が終わり、翌日から新しい元号になる。この機会を心待ちにしている人がいるという。「塀の中」の人である。なぜなら例えば昭和から平成に移った時は、「恩赦」が行われたからだ。
今度も同じようなことがあるのか。あるとしたら、どんな罪の人が対象になるのか。たしかに「塀の外」にいても無関心ではいられない。
本書『恩赦と死刑囚』(洋泉社)は恩赦の戦前・戦後史を振り返り、はたして「死刑囚」が対象になるのかということを中心に検討した本だ。
現在の恩赦は1948年に告示された「恩赦法」という法律で規定されている。「政令恩赦」と「個別恩赦」に分かれる。政令恩赦は、政令により、罪や刑の種類を定め、該当する全員に対し一律に行われる。個別恩赦は、特定の人に対する個別的なものだ。
戦後、大規模な恩赦は12回行われた。直近では、93年の皇太子ご結婚。その前が90年の今上天皇ご即位。さらに89年には昭和天皇大葬に際しても行われた。
一般に恩赦の対象は、選挙違反や道交法、軽犯罪法などの関係者がほとんど。「殺人、放火、強盗」などの凶悪犯罪は除外される傾向が強い。ただし、52年のサンフランシスコ条約締結時の恩赦では死刑囚14人(12~14人と諸説ある)が無期懲役に減刑されている。したがって、今回はどうなるのか、ということが関係者には関心事となる。
著者の齋藤充功さんはノンフィクション作家。近現代史や犯罪をテーマにしており、これまでに『謀略戦 ドキュメント陸軍登戸研究所』『伊藤博文を撃った男 革命義士安重根の原像』『刑務所を往く』『塀の中の少年たち 世間を騒がせた未成年犯罪者たちのその後』など多数の著書がある。
著者によれば1945年以降、716人の死刑が執行された。現在も確定死刑囚として収監されているのは124人。恩赦によって死刑から無期懲役への減刑の対象になるかもしれない人たちだ。
本書で感心するのは、著者が「恩赦」で無期刑に減刑され、のちに仮釈放された元死刑囚と会っていることだ。さらに、かなり知られた事件の主犯だった別の死刑囚と、11年余りの間に100回以上も面会し、頼まれて身元引受人にもなっていることだ。本書では、この死刑囚がなぜ凶悪犯なってしまったのか、死刑確定後の心境なども克明につづられ、きわめて読みごたえがある。
著者は1941年生まれというから、普通ならとっくに現役からリタイアしている年齢だ。にもかかわらず本書のような、厄介なテーマに取り組むエネルギーに感心した。稀有な人だと思った。
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