大手の書店に行くと、文章術の本があふれている。何かちょっとした工夫で、劇的に文章力が上達するかのようなことが書いてある。あえて言えば文章術の「魔法本」である。
本書『大人のための言い換え力』もそうした魔法本の一種だが、類書とやや異なるのは、著者の石黒圭さんの肩書が由緒正しいということだ。国立国語研究所の日本語教育研究領域代表・教授なのだ。
これまでにも『よくわかる文章表現の技術』(明治書院)シリーズを皮切りに、『文章は接続詞で決まる』 (光文社新書)、『論文・レポートの基本 この1冊できちんと書ける!』(日本実業出版社)など多数の文章術の本を書いている。共著も含めると30冊を超えるようだ。近年、文章術の「魔法本」を書いている様々な著者たちの、いわば頂点に鎮座するのが石黒さんといえるだろう。たぶん、類書の著者たちはこっそりと「石黒本」をチ>ェックし、場合に寄ればパクったりしているに違いない。
本書の特徴は「言い換え」に重点を置いていること。文章が上手いか下手かを判断する初歩的な基準の一つに、「同じ言葉を何度も使わない」という隠れたルールある。作家と言われるような人は、たいがいこの「お約束」を厳格に守っている。一度「電気がついた」と使えば、少なくとも同じページでは「明かりが灯った」に変える。いまは、素人でもメールでいろいろ文章を書かなければならない時代だ。パソコン、スマホは昔よりも書き手に「筆力」を要求する。スッキリ、素早く、ポイントを押さえた文章を書いて「おバカじゃない」といいところを見せる必要がある。
本書がアドバイスするように、「言い換え」の力がつくと、読み手を意識しながら書き方を変えるという技ができるようになる。そうなると、上司への報告書も、部下への指示も、ブログでのぶっちゃけ話も自在だ。逆に言えば、「文章が上手」といわれる人は、意識するかしないかは別として、必ずこの「言い換え」に神経を使っているのだ。ふだん、「言い換え」ということを余り考えずに、パターン化した文章を書いている人には、最適の魔法本といえるだろう。
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