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父でも母でもない...TV「ウルトラ」真の生みの親

タケダアワーの時代

 テレビアニメの「サザエさん」が1969年の番組開始時から変わらず日曜夕に放送枠があることから、翌日の月曜から始まる1週間を考えて憂鬱になることを「サザエさん症候群」などと呼ばれる。同じようなことが50年代後半~70年代前半にもあった。子どもたちにとって(もしかすると一部の大人たちにも)日曜の晩は、最もテレビを楽しめる時間帯であり、翌日にそのことを学校で話題にすることを楽しみにしながら就寝したものだ。

 TBS系19時からの30分枠で58年から74年にかけて続いた、通称「タケダアワー」。「月光仮面」や「隠密剣士」から「Q」「マン」「セブン」などのウルトラシリーズのほか「柔道一直線」「ガッツジュン」などのスポ根もの、そして同枠唯一のバラエティー「GO!GO!アイドル」と、いまとなっては伝説ともなっている数々の番組を武田薬品の1社提供で送り出してきた。59年から73年までは、タケダアワーに続く19時30分から、やはり30分枠で「オバケのQ太郎」などが放送された「不二家の時間」があり、日曜19時からの1時間は、子どもたちのゴールデンタイムだったのだ。

 「タケダアワーの時代」(洋泉社刊)は「タケダ、タケダ、タケダ...」の印象的なコーラスで始まり、16年間続いた「タケダアワー」について、関係者らの証言を集めて、テレビのカルチャー史に残した足跡を検証したもの。武田薬品1社提供ではなかったらウルトラシリーズが実現していなかった可能性などが語られている。

「プラッシー」発売と同時期にスタート

 武田薬品は58年、前年に設立した子会社、武田食品工業製造のみかん果汁入りでビタミンCを配合した飲料「プラッシー」を発売。しかし飲料製品の販売ルートを持たなかったため独自に米穀店の流通経路の応用に乗り出し家庭への浸透を図っていた。主食のコメでは摂れないビタミンCを同製品で補ってもらおうという戦略。テレビは家庭に1台の時代。子ども番組のスポンサーとなることは、子どもたちに付き合って視聴する親たちに商品をアピールすることにつながった。

 タケダアワーを担当していた代理店で、一部番組制作も行っていた宣弘社の担当者は「武田薬品は、質の高い番組を送り出すことがまずモットー」と回想。武田側が番組内容に口出しすることなどはほとんどなく、制作サイドを尊重していたという。

 日本初の特撮テレビ映画としてタケダアワー枠で66年に始まった「ウルトラQ」は、怪獣や宇宙人をフィーチャーするばかりでなく社会性を織り込み、子どもにとっては難解と思われるテーマもあった。代理店の宣弘社には「本当にこれをお茶の間で放送するんだろうか」と腰が引けたこともあったそうだが、スポンサーサイドからのダメ出しなどはなかった。本書では、同番組が武田薬品1社提供でなかったら、日本のテレビをめぐるカルチャーが大きく変わっていた可能性に言及。「タケダなくしてウルトラなし」と強調している。

 忍者ブーム、怪獣ブーム、スポ根ブームの起源や加速を担った「タケダアワー」。本書では「平成」のエンディングを前にして見直されている「昭和」の知られざる側面が語られている。

  • 書名 タケダアワーの時代
  • 監修・編集・著者名友井健人、泉麻人、河崎実、他
  • 出版社名洋泉社
  • 出版年月日2017年9月11日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数B6判・207ページ
  • ISBN9784800313218

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