本書『「よく見える目」をあきらめない』によると、いま、眼科の世界で「革命」が起きているそうだ。50代、60代、70代でもメガネなしで過ごせるようになったという人が増えている。濁った水晶体の代わりに開発された「眼内レンズ」の劇的な進歩によるものだという。
本書はそうした「新しい眼科医療」について、わかりやすく紹介している。著者の荒井宏幸さんは眼科医で近視矯正手術・白内障手術など眼科手術の専門家だ。数多くのスポーツ選手・タレントのレーシック手術を手がけ、TV出演も多い。『老眼は治ります』『スマホ老眼は治る!』など、何冊かの著書がある。
荒井さんのクリニックでは老眼手術をすでに1500件以上も手がけている。手術を受けた人の8割は、そのあと眼鏡を購入していないという。ただし、老眼手術は自由診療のため、費用は高い。手術したいという人が来ても、まだ時期ではないと判断した場合は、手術を見合わせている。4人に1人ぐらいがそうした患者だという。
初めて知ったのだが、眼科医療の分野ではアメリカよりもヨーロッパの方が進んでいるそうだ。日本の眼科医もヨーロッパの学会で新しい知見を得る人が増えて、米国よりも進んだ医療機器や眼内レンズを使っている。とりわけ意欲的なクリニックの場合、小回りが利くので、動きが速い。たとえばレーシック手術は、日本では大学病院よりも民間のクリニックで広く行われている。本書では信頼できるクリニックの選び方などについても詳述されている。
もうひとつ、興味深く感じたのは、著者が木工職人だった父親に感謝していることだ。繊細な仕事を完璧に取り組む姿勢を教わり、器用な指をもらった。
確かに日本は明治維新直後の1872年のウィーン万博に早々と参加し、精巧な工芸品などが称賛された。テレビで時折紹介される「ゴッドハンド」の医師たちの活躍ぶりを見ていると、こうした工芸の伝統と無縁ではないと感じることがある。荒井さんの父親はカンナ削りが命だったという。親の遺伝子を立派に受け継いで、荒井さんは眼科医としての技を磨いたといえるだろう。日本の職人技の伝統が最先端医学に継承されていると思った。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?