読むべき本、見逃していない?

「絶頂」「気持ちイ~イ」は分からないことだらけ

オルガスムの科学

 

 あまりにも直球すぎる書名なので、読むのが恥ずかしいと思う読者は多いかもしれない。 この手の本でよくあるのは、真面目そうなタイトルをつけて実はエロの指南書だったりするパターンだが、断言しよう。本書はいたって真面目で、色っぽい話なんてほとんど出てこない。

進化生物学上の謎の一つ

 

 それが証拠に、本書は米国医学会で最高に権威ある学会誌とされる「米国医師会誌」で「性的快感に関する最新の科学的な理解を集大成した素晴らしい一冊」と絶賛され、性科学研究財団が最も優れた性科学分野の研究に送る「B&Vバロー賞」を受賞した。

 

 なぜこれほど高い評価を受けるのか。実は、オルガスムという現象は進化生物学上の謎の一つであり、医学的にもわからないことがたくさんある。「男性と女性で快感が異なるのはなぜか」「年齢とオルガスムには関係があるのか」「下半身不随となってもオルガスムを感じるのはなぜか」「性ホルモンとオルガスムはどのように関係するのか」......。本書では24章にわたってオルガスムに関する最新の知見を紹介し、この不可思議な現象から人体のメカニズムの謎に迫る「真面目」な本なのだ。

痛みと快感は裏表

 専門家がオルガスムの謎を探求するのは、脳と身体の複雑な相互関係、すなわち「意識」の謎を解明する鍵になると考えられているからである。

 

 例えば、「幻のオルガスム」の研究は興味深い。これは、脊髄を完全に損傷したため生殖器への刺激を感じることがないはずの人が、睡眠中にオルガスムを感じるのはなぜなのかについての研究だが、驚くべきことに生殖器への刺激が脊髄を回避して、直接脳に届いていることが証明されている。また、痛みを感じているときの表情と、オルガスムの際の表情が似ていることから研究された「『痛み』と『快感』は、脳内の同じ現象なのか?」という謎についても、驚くべき仮説が紹介されている。

 著者は「痛みをつらく感じ、快感を気持ちよく感じるのはなぜか」の答えを見つけることが神経科学の究極の目的であると述べている。研究の現状について書かれた本ゆえに、「......についてはまだ解明されていない」という表現が時折現れ欲求不満を誘う難点はあるが、最新の研究の数々には驚くばかり。脳神経科学と内分泌学の最先端の教科書ともいえるだろう。

 生物学から神経科学まで、最新の知見を知ることで知的好奇心が満たされるのはもちろんだが、本書を読めば、その結果として飲み会の席での下ネタトークに「箔」がつくというメリットがあることも請け負おう。(BOOKウォッチ編集部 スズ)

  • 書名 オルガスムの科学
  • サブタイトル性的快楽と身体・脳の神秘と謎
  • 監修・編集・著者名バリー・R・コミサリュック、カルロス・バイヤー=フローレス、ビバリー・ウィップル 著 福井昌子 訳
  • 出版社名作品社
  • 出版年月日2014年12月25日
  • 定価本体価格3200円+税
  • 判型・ページ数四六版371ページ
  • ISBN9784861825071

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