東京のちょっと変わった建築を訪ねる本は多い。とりわけ藤森照信さんの「建築探偵」などは人気だ。
本書『東京「ぽち小屋」探歩』もそうした範疇に入るだろう。ただし、訪ねるのは「小屋」である。それも小さな「ぽち小屋」である。
荒川河川敷・新東京都民ゴルフ場の休憩所、神田川・柳橋小松屋の船着き場、東銀座・三原橋の景品交換所、小名木川排水機場の水門小屋、西日暮里・道灌山公園のバラック小屋、明治神宮の電話ボックス、浜離宮恩賜公園の除き小屋...。
通りかかっても見過ごしてしまうような小さな施設、あるいは誰も気に留めない、名前もないような地味な建物。それらを探し、写真を撮り、あちこちから眺め、中に入る。「建築探偵」というよりは、赤瀬川原平さんらの「路上観察学」に近いかもしれない。そんな珠玉の「ぽち小屋」を都内で23件集めたのが本書だ。
著者の持田庄一さんは1947年生まれ。東京理科大学工学部建築学科卒。ふぉるむ建築研究室代表で、「ぽち小屋探歩の会」を主宰している。「会えば会うほど魅力的で、しかもとても楽しくなる小屋」に淫してしまったのである。
建築家だから、小屋の構造などについて、一般人には分からない、かなり詳しい専門的な分析もされている。
かつて、吉野山の奥千本に西行庵を訪ねたとき、余りにも粗末な小さな庵だったので驚いたことがある。今や世界的建築家の安藤忠雄氏の出世作は「住吉の長屋」だった。というわけで、「ぽち小屋」を馬鹿にすべからず。首都に乱立する高層ビルを横目で見ながら、本書を手に、建築の原点をたどるへそ曲がりな探索をしてみるのも一興だろう。
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