読むべき本、見逃していない?

日本のスパイ養成機関の全貌が明らかになった!

  • 書名 陸軍中野学校
  • サブタイトル「秘密工作員」養成機関の実像
  • 監修・編集・著者名山本武利 著
  • 出版社名筑摩書房
  • 出版年月日2017年11月15日
  • 定価本体1700円+税
  • 判型・ページ数四六判・281ページ
  • ISBN9784480016584
 

 陸軍中野学校と聞いて、1960年代に市川雷蔵が主演した映画「陸軍中野学校」シリーズ(大映、全5作)を思い出した人は相当な年配であろう。若い人は亀梨和也が主演した映画「ジョーカー・ゲーム」(2015年公開、原作・柳広司)に登場する「D機関」のモデルとして知っているかもしれない。日本陸軍が情報将校の養成のため1938年に「防諜研究所」として設立(1940年に陸軍中野学校と改名)した軍学校である。しかし、その存在は陸軍内でも極秘とされていた。

 

 多くの資料が戦後、焼却されたためその実像は闇の中にあったが、その割には多くの読み物的な本が出版されてきた。ルバング島から帰国した小野田寛郎さんが陸軍中野学校二俣分校出身だったことで注目を浴びたこともあった。

 

 本書はマスコミ史研究で知られる山本武利・一橋大学名誉教授が、一次資料を基に約20年取り組んできた日本のインテリジェンス(諜報)研究の成果を問う画期的な研究書である。国立公文書館が運営するアジア歴史資料センターから1期生の実名、出身校一覧など多数の資料を発見し、中野学校関係者も知らなかった事実を発掘したのだ。

東大出身者も多かった

 

 たとえば学生は陸軍士官学校、陸軍予備士官学校などの出身者から選抜されたが、大半は一般大学卒業者。東大出身者も珍しくなかった。長髪、背広で通学したのは、一般人を装うためだ。授業では天皇制の是非を論議することもあったという。

 映画「陸軍中野学校 開戦前夜」では、香港でチャイナドレスを着た女性が、市川雷蔵が主役を務める日本人情報員の背後から小走りで走ってきて、背中に毒針を打って気絶させ、拉致する場面も出てくるが、北朝鮮による金正男氏毒殺事件を彷彿とさせる。中野学校の出身者は、映画の内容の8割は事実だと指摘しているそうだ。そんなスパイ養成機関が本当に日本に存在したのだ。

 

 卒業生の多くは実際に中国大陸で多くの諜報工作に当たった。売春婦を使い、ハニートラップで英米の将兵から機密を聞き出すようなこともあったという。対ソ連工作に従事した卒業生の大半はシベリアに抑留され、悲惨な死を迎えた人も少なくない。戦後は「『中野』は語らず」と出身者は沈黙してきたが、山本さんは「もっと経験を語るべきだ」と本書のあとがきに書いている。「失敗を語れ、失敗から学べ! レガシーを総括せよ」と。

 週刊ポスト(2017年12月22日号)書評で平山周吉さん(雑文家)は「謎に包まれた諜報機関『陸軍中野学校』の紛れもない、本格的な歴史書の出現である」と賛辞を送っている。資料の出所をすべて明示した研究書でありながら、叙述はわかりやすく、スパイ小説を読むような面白さに満ちている。

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