日本でただ一人、詩作だけで食べている詩人と言われてきた谷川俊太郎さんに文芸ジャーナリストの尾崎真理子さん(読売新聞編集委員)が、3年越しのロングインタビューをした。『二十億光年の孤独』以来、第一線であり続ける詩人の創作と生活が余すところなく描かれた労作である。
谷川さんの父、谷川徹三(哲学者)が友人の三好達治(詩人)に谷川さんの詩作ノートを持ち込み、それが「文学界」に掲載され、『二十億光年の孤独』という詩集になったエピソードをはじめ、興味深い事実が満載だ。
三度目の結婚相手は『100万回生きたねこ』で知られる絵本作家でイラストレーターの佐野洋子さんだった。佐野さんとの出会いと別れについても驚くべき率直さで語っている。「僕は彼女のいいところ、全部吸収したからね。佐野さんには、僕から吸収するものはなかったんだ。僕のいいところというのは、彼女にとっては別にどうでもいいことだったから、不公平だと思ったんじゃないの」
ジャンルは違うが、村上春樹氏との類似点を指摘しているのも著者の卓見だろう。さっそうとデビューしてから二人が浴びた「罵倒や冷笑」もさることながら、書き手としての資質や作品の感触がそうだというのだ。「デタッチメント」という言葉を他者と距離を十分保って生きる自分の態度として用いる場面が共通していると指摘する。「シンプルに、わかりやすく、新しい文体で書くことを貫き、自身の無意識の力を信頼し、独力で創作に打ち込んできた」というのだ。
題名は谷川さんの詩の一節から取ったという。別の詩にはこんなことも書かれている。「本当のことを言おうか/詩人のふりをしてはいるが/私は詩人ではない」
全2500作から厳選された詩20篇と書下ろし1篇を収めた盛りだくさんの書である。
共同通信配信の書評(12月10日付)で文芸評論家の鈴村和成氏は「やわやかく詩人を包みこむ、尾崎真理子の包容力と幅の広さがこの本の魅力だ」とした上で、「インタビューを試みる方々も学ぶべきプロの指南書といえる」と高く評価している。
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