「群像」2018年1月号
文芸雑誌「群像」(講談社)が2018年1月号で、作家の佐藤愛子さんと瀬戸内寂聴さんの対談を載せている。
新年号では各雑誌とも、あれこれ企画に力を入れているが、この超ビッグ対談が他誌を圧している。文芸誌はもちろん、総合誌、女性誌、一般誌の編集部は「やられた」と歯ぎしりしていることだろう。
佐藤さんは『九十歳。何がめでたい』(小学館)が100万部突破。2017年の年間トップの売り上げを記録した注目の人。瀬戸内さんは12月2日に出した小説『いのち』(講談社)が早くも3刷と出足好調だ。現役最高齢作家だが、連載エッセイなどもこなして根強い人気が続く。
佐藤さんは94歳、瀬戸内さんは95歳。話題の二人の対談が載っているということで、書店を回っても売り切れのところが多く、入手に苦労した。
ともにご高齢なので、数ページの対談かと思ったが、13ページもある。対談は11月2日、東京のホテル椿山荘。瀬戸内さんは足腰が弱っていると聞いていたが、頑張って上京されたようだ。この段階ではまだ瀬戸内さんの『いのち』は出版されていないが、佐藤さんは予めゲラで読んで対談に臨んだというから、きちんとしている。
扉の写真は、その時の撮影のようだ。お二人とも若々しく、はつらつとしている。とても合わせて189歳とは見えない。
対談のタイトルは「愛情がないと書けない」。一読して感心するのは、二人の頭脳明晰ぶりだ。『いのち』を読んだ佐藤さんが、まず瀬戸内さんをほめる。
佐藤 「記憶力がすごいわね。昔のことをこんなにこまかいところまで」
瀬戸内 「みんなそう言うんだけど、覚えているでしょう、あなただって」
佐藤 「人の言ったことなんて覚えてないもの。自分のしたことなら覚えているけど」
瀬戸内 「それだけで小説が書けるじゃない・・・」
このほか敬慕する作家や文学、男の話から死についてまで縦横に語り合っている。とくに「男運」についての話が弾む。ともに戦争中に青春を送った世代。男はみんな戦争に撮られ「トラック一台の女に男一人」といわれた。そんな恋愛御法度の時代を経験しているだけに、その後の「恋バナ」が尽きない。まるで「永遠の女学生」、失われた青春を取り戻すかのように、生き生きしている。このあたりの若々しさが、今の世代を超えて人気がある秘密だろう。
願わくは毎月、とは行かなくとも毎年、新年号で対談を続けてほしいと思った。なにしろ、読むだけで元気が出る。
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