富裕層がどんなふうに税金逃れをしているのか、ちょっと知りたくて読んでみた。タイトルのような「バレない脱税」なんてあるのか?
結論から言うと、この本は難しい。素人にはわかりにくいところが多い。(脱税の経験も、節税の余裕もないからでしょう)。わかったのは、富裕層が国際的にかなり面倒な手口で、脱税なり節税をしているらしいということだ。
著者の佐藤弘幸さんは国税OB。それもただのOBではない。東京国税局資料調査課、通称「リョウチョウ」に長く在籍し、「大口」「悪質」「宗教」「政治家「国際取引」「富裕層」などの税務調査をしてきたベテランだ。
一般に「国税調査官」と言えば「マルサ」が有名だ。しかし、徴税力に関しては「リョウチョウ」の方が圧倒的に怖い存在だという。単純化すれば、「マルサ」が中小事業者などの古典的な脱税を扱うことが多いのに対し、「リョウチョウ」は大型案件を狙う。年間に告発する脱税金額も「マルサ」の数倍以上になるという。
パナマ文書などでタックスヘイブンが注目され、大金持ちや大企業が、国際的にお金を隠している、もしくは節税している実態が一般国民にも知られてきた。佐藤さんによれば、「パナマ文書」などは、必ずしも悪質な租税回避と言えないのではないか、という。つまり、実際には、もっと悪質なものがあるということだ。
本書は、第一章「税金から逃れる『庶民』たち」を導入部として、第二章「『富裕層』のバレない脱税」、第三章「暗躍する『脱税支援』ブローカーたち」の三部構成。本題の「富裕層」については第二部で、その手口が詳細に語られている。基本的に海外が舞台。「解約返戻金重視の外国生命保険」「起業家の資金移転スキーム」「無分配型ファンド」「レバレッジ」などの専門用語をもとに説明が続く。
文章は平明だが、手口は複雑。金融、不動産などの関係者にとっては興味深いだろうが、素人のアタマには難しい。記憶に残ったのは、「パナマ」ばかりが注目されているが、東南アジアもヤバイ、とくにマレーシアの「ラブアン島」が要注意だということ、脱税指南をする悪い奴らの中には、「国税OB」が少なくないこと、15年ほど前まで、国税・税務署の幹部は、定年の一年前に勇退すると当局から顧問先をあっせんされていたこと、などだ。
とにかく著者の知識は相当なもの。国際化する租税回避に対応し、当局は国際税務部門を強化しているが、人材不足だと言い切る。国際的な脱税コンサルタントはたいがいインテリであり、「持てる者」の国際ゲームを楽しんでいる、日本の税務当局を完全にナメ切っている、と憤る。
ちょっと意外だったのは、本書がきわどいタイトルにも関わらず、NHK出版から出ていること。たしかに、少し肉付けすればNHKの特番にもなりそうな内容だ。あるいはすでに特番になっているのだろうか。
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