陸上自衛隊トップの陸上幕僚長を1993年から2年間務め、その後大学の教壇に立った著者のスタンスは、意外と穏当なものだ。週刊東洋経済(2017年12月9日号)の著者インタビューでも「昔の軍事は相手を撃滅することだったが、今は外交の背景としての軍事がほとんど。(中略)そのためには国際条理に通じる軍事的常識を知らなければならない」と説く。
いくつかの章タイトルを挙げるだけで、我々の常識のもろさが分かる。「戦争を放棄しているのは日本だけではない」「日本に北朝鮮のミサイル邀撃なんてできるわけがない」「『専守防衛』は軍事的に成り立たない」
北朝鮮のミサイルについて説明すれば、「米国本土向けのミサイルが仮に北朝鮮から発射されるとして、それは日本上空を飛ばないからである」という。ハワイ、グアムを攻撃する場合でも高度的に邀撃は不可能だそうだ。もっとも日本を攻撃する可能性もあるので、日本の持つ「待ち受け兵器」の意義を否定するつもりはないが、軍事の常識がないと、政治家たちの議論のおかしさを追及することも出来ない。
個人的には第8章「陸・海・空自衛隊の『出自』と『性格』」の項がもっとも面白かった。 陸は「用意周到・頑迷固陋」、海は「伝統墨守・唯我独尊」、空は「勇猛果敢・支離滅裂」がそれぞれの特徴をとらえた四文字熟語だという。そうか、アノ方は空自のトップだったんだと思うと、当たっているような気がしないわけでもない。
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