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ふだんは見えない「新橋の古層」を探訪する

新橋アンダーグラウンド

 しばしば「サラリーマンの聖地」といわれるのが東京・新橋だ。JRの駅を降りて西側に出ると、飲み屋だらけ。ガード下や網目状に広がる路地に赤ちょうちんがしのぎを削る。まさに日本一の居酒屋タウンだ。こんなに密集していて採算が取れるのかと心配になるが、大概の店はにぎわっている。

 最近は安くておいしい人気店も増えて、一部では渋谷化、恵比寿化も進んでいる。意外なほど若い女性も多い。合コンの会場になるようなオシャレな店も少なくないという。

著者自身のセンチメンタルジャーニー

 本書のテーマはそうした「オモテの新橋」「新しい新橋」ではない。むしろ、その陰に潜んでいる新橋の古層だ。目を凝らすとまだあちこちに、「古い新橋」が見つかる。それを独特の嗅覚と人脈、稀なる探訪能力で知られるベテランジャーナリストの本橋信宏さんが探り当て、自ら体験し、読者に開陳する。

 目次を眺めただけで、思わずそそられる。「第一章 闇市が生き残る街」「第二章 オヤジの聖地・ニュー新橋ビルを迷い歩く」「第三章 新橋はなぜナポリタンの街となりしか」。

 このあたりは他のフリーライターでも書けるかもしれないが、「第四章 三大実話系週刊誌と新橋」は著者の独壇場だろう。「私の新米記者時代 / 三十六年前に取材した店はいま」とタイムスリップしつつ、「三大実話誌と山口組 」まで踏み込む。当時の思い出話が満載。まさに著者自身のセンチメンタルジャーニーであり、だからこそ独壇場なのだ。

異界シリーズ第4弾

 今や「世界のジブリ」となったスタジオジブリも新橋と縁が深い。なぜなら新橋にあった徳間書店の盟主、徳間康快氏がジブリを本気で支援育成したことが宮崎駿アニメの成長と発展につながったからだ。「スタジオジブリ代表・鈴木敏夫に会う」という項目などで、そのあたりを改めて振り返っている。そもそも鈴木氏は徳間の社員だったし、アサヒ芸能などを経て、アニメ雑誌の編集をしていたときに宮崎さんと親密になったのだ。

 さらに五章以降では、「最後のフィクサー」「新橋名物レンタルルームで漏れる嗚咽」「消えた成人映画会社『東活』」などが続き、どんどんディープになっていく。

 本書は『東京最後の異界 鶯谷』『迷宮の花街 渋谷円山町』『上野アンダーグラウンド』につづく本橋信宏"東京の異界シリーズ"第4弾。昭和が遠くなり、平成も間もなく幕を下ろすという歴史の流れの中で、かすかに東京に残る戦後の痕跡をたどる著者の旅は、今では姿を消した「黒テント」や「紅テント」の芝居小屋に紛れ込んだようで懐かしい。

  • 書名 新橋アンダーグラウンド
  • 監修・編集・著者名本橋信宏 著
  • 出版社名駒草出版
  • 出版年月日2017年11月16日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・336ページ
  • ISBN9784905447863

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