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大英博物館よ、アンタの正体を見たかも

コレクションと資本主義

 

 「資本主義の終焉」を見通す経済学者、水野和夫さん(法政大学教授)と『アートは資本主義を予言する』などの著書がある画商、山本豊津さん(東京画廊代表)が、美術品の蒐集と資本主義との意外な関係について語り合った。

 

 美術品の蒐集とは、世界中の価値を集め、自分たちの価値観によってそれらを体系化し「世界を所有すること」、そして公開し、「自分たちの立場と力を誇示すること」。西欧の美術館、博物館の根源には、帝国主義的な世界支配の意図があったという。モノを蒐集して資本を増やす行為が、資本主義の原型を生み出したのだ。確かに大英博物館などはその典型だろう。

 

 山本さんは芸術と政治、経済の関連性にふれる。たとえば印象派は色を分解して新しい表現を試みたが、そこには18世紀の産業革命や科学革命によって生まれた分析的、客観的に世界を把握する視点が通底すると指摘する。

 

 水野さんが「歴史の終焉」について思いを深くしたのは、鈴木忠志さんの演劇作品「世界の果てからこんにちは」がきっかけだったという。経済に関係のないもののなかに、経済の本質が潜んでいるというのだ。

 

 二人の対談は、金融資本主義とグローバリゼーションをもってしても蒐集が限界を迎えたならば、もはや世界帝国としてアメリカが世界に君臨する必要もないから、トランプ大統領が誕生したのは必然だと結論づける。

 

 しばしば先端のアーチストは芸術と資本のダイナミズムを逆手にとり、いわゆる反芸術・反体制の作品をも生み出している。芸術はそうしたものも取り込んで延命してきた。だとすれば資本主義も同じように反資本主義の理論を内在化することによって自己変革を遂げていくのではないか、という指摘が示唆に富む。

 

 ジャンルの異なる論客同士の対談は、実にかみあっており、刺激的だ。巻末の経済と芸術の相関略年表が役に立ちそうだ。

     
  • 書名 コレクションと資本主義
  • サブタイトル「美術と蒐集」を知れば経済の核心がわかる
  • 監修・編集・著者名水野和夫、山本豊津 著
  • 出版社名株式会社KADOKAWA
  • 出版年月日2017年9月10日
  • 定価本体840円+税
  • 判型・ページ数新書判・260ページ
  • ISBN9784040821849

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