題名にひかれ、我が子を「天才」に育てようと本書を買い求めても失望するだろう。天才願望の書ではない。日本の教育を時代にふさわしく底上げするにはどうしたらいいか、を論じた書である。
著者の汐見さんは東大名誉教授で現在、白梅学園大学学長の教育学者。2016年12月に策定された「教育機会確保法」の意義から書き起こしている。「学校を休んでもいい」「学校以外の場の重要性」を認めたのが同法のキーワードだという。また20年度から新しくなる学習指導要領では「教科書と黒板を使った授業のやり方を大きく変えて、なるべく子どもが主体となるような学びに変えていってほしい」と中教審が答申している。学校を多様化しないとこれからの人材が育たないと国も気が付いたのだ。
本書では著者が詳しいヨーロッパ各国の幼児教育やパブリックスクールの先進例が紹介されている。どの例を見ても日本の画一的な公教育とは大違いで、ため息がもれるが、あきらめてばかりでいいだろうか。
著者は低成長時代には草食系男子(もちろん女子も含む)に期待したいという。スーパーヒーローや天才と彼らはメダルの裏表で、支配的な教育の外で育ってきた存在だからだという。
「最低限の読み書きそろばんは必要だとしても、それは学校の午前中だけで十分だ。午後は子どもがそれぞれ自分のやりたいことを見つけて、それを伸ばすことに専念する。そのやり方を学校が認めてくれないなら、その学校の存在意義は薄い。そうしたほうが、絶対面白い子が育つからだ」と週刊東洋経済(11月18日号)でインタビューに答えている。
日本社会のこれからのモデルが提示できない現在、子どもたちが旧来の価値観のままの学校で教えられていいのか、と誰もが思うだろう。そうした疑問に答える書として有用だ。
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