東京・明治神宮外苑の東側にある明治記念館(東京都港区元赤坂)は、格調高い結婚式場、宴会場として知られる。東宮御所や各宮家の宮邸がある赤坂御用地に隣接する"ロイヤルエリア"にあり、その立地が示すように、最初から結婚式場・宴会場として建てられたものではない。京都の学術・芸術書籍専門の出版社から刊行された本書は、明治記念館開館70周年のメモリアルブックで、同館が、明治天皇が使用した「御会食所」の遺構であることを伝えている。
著者の山﨑鯛介さんは東京工業大学工学部准教授で「明治宮殿の意匠的特徴とその成立過程に関する研究」を専門の一つにしている。メアリー・レッドファーンさんは日本美術の収蔵で世界的に知られるアイルランド・ダブリンのチェスター・ビーティー図書館学芸員、今泉宜子さんは明治神宮国際神道文化研究所の主任研究員で『明治神宮―「伝統」を創った大プロジェクト』などの著書がある。
本書は主に「建築」「食卓」「宮中外交」などの3セクションで構成されるが、建築について山﨑さんが、食卓で用いられた洋食器などについてレッドファーンさんが、外交で催された饗宴などについて今泉さんが担当している。
最寄り駅のJR信濃町駅から青山方面に向かう外苑東通りから敷地に入って見える現在の明治記念館本館、通称「憲法記念館」は、かつては明治天皇が使用した「御会食所」であり、赤坂仮皇居に建設されたもの。明治天皇と昭憲皇太后が外国からの賓客をもてなすため、宮中晩餐会の会場として使われた。1881年(明治14年)に完成し、130年以上を経過した現代でなお、広く一般に利用されている。
施設が計画された当時はまだ明治期に入って間もないといえるころで、あらゆることが変化していた時代。国際的な舞台に立つことになった皇室では、座式だったものは立式になり、内装なども欧風に変わっていく。明治記念館は外観は和風の建築のようだが、内部では書院造風のインテリアの一方、立式の儀礼に対応した仕上げを施している。
明治天皇が使用した宮殿建築で唯一現存する建物であり、明治記念館は歴史上の貴重な遺構でもある。
読売新聞(2017年11月5日付)の書評で本書を取り上げた政治学者で京都大学教授の奈良岡聰智さんは「かつてここでは、明治憲法の草案が審議された他、天皇や皇后による外賓の接待やさまざまな儀式が行われた。まさに『明治の息吹』を感じることができる建物が、明治記念館なのである」と述べている。
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