俳優高倉健は私生活をさらすことを極端に拒否した。彼がほぼ毎日通っていた都心の理髪店が一時期には連絡先になっていたほどだ。大作の公開前には、ほんの少しだけ自分を語るようなタイアップ番組に出ることはあったが、そこで語られる小田剛一という自己と俳優高倉健の姿はどこか重なり合い、虚と実が入り混じるような印象を受けた。
本書は硬派のノンフィクションライター森功氏が、親族、映画関係者の証言を集め、その実像に迫ろうとしたものである。京都の隠れ家、大物ヤクザがレスペクトする男、溺愛した養女など、章のタイトルを追うだけで多面的な姿が浮かび上がってくる。
死後、養女という人が遺産の相続者となり、それまでの高倉の足跡を消し去るような行動をしているという。著者の懸命な取材にもかかわらず、二人の関係は不明な部分が多い。
評者の後藤正治氏(ノンフィクション作家)は「高倉健を包むベールは随分と薄くはなったが、依然としてよく視えない人という感触が残る。ふとそれでいいのかも知れないと思う」と書く。スクリーン上の高倉健に共感する上で、「別段、高倉健の実像を知ることは必要としないのであるから」と結んでいる。その通りかもしれない。
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