パソコン(PC)が登場したころは「マルチタスク」をうたいながらも、その実は「シングルタスク」がせいぜいだったのだが、IT技術は長足の進歩を遂げて、現代では片手の操作で足りるスマートフォンが「マルチタスク」をこなしてくれる。同時に複数案件処理することに人も挑むようになったが実は、人の脳と手による仕事は元々アナログだからマルチタスクには向いてない。本書は、早くそれに気づいて「一点集中」のスキルを磨けと主張する。
1人がPC、スマホ、タブレットを使いこなし、それぞれの端末がダウンロードしながらウェブ検索できるなど、デジタル時代はマルチタスクが当たり前の時代。ところが、それは人がやるには向いていないという。向いていないどころか非効率化を招くだけなのに、人々は「マルチタスク」病に集団感染していると指摘。「同時進行」から離れろと訴える。
この病気は、悪影響は非効率化ばかりではない。危険も招く。「運転中のスマホ」だ。自動車ばかりでなく、電車の運転士らが乗務中に操作しているのが発覚し何度か問題になっている。"ながら"の危険について本書では、ある男性がこう語る。「マルチタスクが及ぼす悪影響には、おそろしいものがある。運転中にメールを読んでいたら、どうなると思う? 前の車に追突する。電話で同僚と仕事の話をしながら、新聞を読んでいたら? 納期に間にあうはずのない仕事を、『まかせてくれ』と安請け合いしてしまうだろう」
著者は、脳科学や神経学、心理学の専門家らによる最新の研究成果などをエビデンスとして、人の脳にはもともとマルチタスクを同時に処理する機能はなく、複数のものを手際よく扱っているつもりでも、実はそれぞれが断片化しており短期記憶に分断されているという。その結果、長期記憶がうまく保存されず不完全となり、マルチタスクを試みて能率が落ちるサイクルになっている。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)神経科学部のアール・ミラー教授は本書でこう述べる。「なにかをしているときに、べつのこと(タスク)に集中することはできない。なぜなら2つのタスクのあいだで『干渉』が生じるからだ。人にはマルチタスクをこなすことなどできない。『できる』という人がいるとしたら、それはたんなる勘違いだ」。マルチタスクであると思ってやっているのは実は、タスクスイッチング(タスクの切り替え)であり、そのたびに断片化が発生している。
こうしてマルチタスクの"幻想"を指摘してから著者は、シングルタスクの薦めに転じる。「一点集中」により生産性は最大化することを論じデータを提示。実行のためとして「SNSとは距離を置け」「面倒臭い課題から処理する」などと具体的なポイントを挙げる。週刊ダイヤモンド(2017年10月7日号)の「ブックレビュー」で本書を紹介した、リブロ営業推進部マネージャー、昼間匠さんは「私は本を併読するタイプでしたが、1冊集中型に変えたら結果的に読破数が増え、理解度も増していました」と述べている。
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