当然ながら「素人」や「初心者」向けの本である。結論は、タイトルにあるように「投資なんて、おやめなさい」。
ところがいま金融機関は、そんな素人や初心者を相手に熱心に投資を進める。つい、誘いに乗りそうになる。なぜプロの集まりである金融機関が素人の個人に近づくのか。
著者の経済ジャーナリスト、荻原博子さんの説明によれば、引き金になっているのはアベノミクスだ。異次元金融緩和で日銀が銀行から大量に国債を買い上げて、銀行にはお金がだぶついている。本来は企業に融資すべきだが、企業は内部留保が膨らみ、お金を借りる必要がない。ターゲットになったのが、個人。昔なら住宅ローンだが、実需が伸び悩んでいる。そこでお金のない人にはカードローン、ある人には「投資商品」を働きかけている...。
「投資商品」は金融機関にとって非常に「うまみ」があるのだという。商品が上がるか下がるか、最終的なリスクを引き受けるのは買った本人だ。売る側はノーリスク。契約を取れれば、販売手数料や維持管理費が粛々と転がり込む。
以前はこうした投資商品に手を出す素人は少なかった。しかし今やゼロ金利。預金して寝かせておくだけでは老後資金が増えない。そんな消費者心理に銀行や生保、証券会社がつけこんでいると分析する。
第3章では「こんなクズ商品には手を出すな」と具体的に列挙する。「毎月分配型投信」「高金利で釣る定期預金」「豪華プレゼント付き個人国債や外貨預金」「マンション投資」などだ。
第4章では「なぜ個人年金はダメか」についても詳述している。郵便局が売っていた「変額個人年金」はその後、6つの商品が募集停止になっているそうだ。今や「郵便局で申し込んだのだから大丈夫」などということはない、という。
それでは多少の預金のある人はどうすればいいのか。著者はそのまま預金し続けることを推奨する。デフレ気味なので、利子が付かなくても、預金の相対的な価値は上がる傾向にあるとみる。
もちろん著者は一概に「投資」を否定するわけではない。著者自身、40年近く様々な投資にトライをして「身銭を切って学んできた」。結論は、投資=ギャンブル。損しても後悔しないだけに余裕資金がある人や、金機関と対等に渡り合えるだけの知識や経験があれば、おやりなさい、と。
巻末には「投資に向かない人」のチェックリストや、「こんな金融商品・勧誘には要注意」なども付いている。投資を始めてみたいけど、始められない人には、手ごろな学習書になりそうだ。
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