副題にある「アメリカ犯罪史上初の未解決連続殺人事件」を追ったノンフィクション。西部開拓時代の雰囲気が残る19世紀末のテキサス州の州都、オースティンがその舞台だ。オースティンは20世紀なってからは産業の発展、経済成長が著しく、事件はその陰に隠れて歴史のなかに埋もれていたが、地元在住の著者が掘り起こした。
最初の事件が起きたのは1884年12月31日。街で黒人女性のメードが殺害された。翌年になって5件の凶行が続き、いずれも犠牲になったのは黒人女性。そしてその年のクリスマスイブに白人女性2人が襲われ殺害された。
いずれの事件も手口が残忍で遺体の損傷が激しく、捜査かく乱のためか現場の様子に意図的に手を加えた跡が分かる。目撃者がいても人相などについて手がかりになるような証言が得られない。
警察では不審とみた人物をかたっぱしから拘束しては尋問を行い、なかには拷問に近いことも。400人以上の"容疑者"が浮かんだが、真犯人とするにはいずれも決め手がない。その一方、黒人たちは街から逃げ出し、白人らは武装を強化。業を煮やした市長は、当時の有名探偵を呼び寄せるが、やってきたのは別人で、まったく役に立たなかったうえに当局のツケで"豪遊"していたというウソのようなエピソードもはさみ込まれている。
犯行は1885年のクリスマスイブの事件を最後にぴたりと止まる。その3年後の1888年、イギリスで「切り裂きジャック」による猟奇殺人事件が連続発生。犯行の手口に共通点が多く、「ミッドナイト・アサシン」が大西洋を渡り「切り裂きジャック」になった可能性が指摘されたが、こちらも未解決のままになっている。
オースティンでは1930年代以降は工業が発展し、2000年代に入ってからは、IT産業が成長。近郊と形成する拡大都市圏にはデルやインテルなどが拠点を置いており、サンフランシスコ近郊の「シリコンバレー」にならって「シリコンヒルズ」とも。本書では、このオースティンの街づくりに実は「ミッドナイト・アサシン」の事件が影響していることを示唆。評者の、出版社「荒蝦夷」代表、土方正志さんは「米国史に埋もれた連続殺人事件を追った犯罪ノンフィクションの逸品」と評する一方「殺人鬼への恐怖が都市計画にまで影響を与えたとの指摘も興味深い」と述べている。
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