近年報道された世界保健機構(WHO)のデータや、欧米の医学専門誌などによる調査によれば、世界の肥満傾向は進む一方であり、効果的な対策の必要性が強調されている。効果的な対策のためには原因を突き止めなければならない。本書は、そのために待望の一冊といえる。ヒトの肥満について、進化生物学的アプローチにより解明を試みており、その手法は前例がないという。2人の著者はともに米産科婦人科学会の研究員。
米国では農業政策の変更などから国民の摂取カロリー量が増え、これに応じて市場には高カロリー食品が供給されるようになり"肥満大国"への道が始まった。
米国はいわば「キャンディーに満ち溢れた土地」。ヒトはそもそもそういう環境で暮らすようにはつくられてはおらず、長い間に深刻化したミスマッチが肥満を増やしたという。
種としての誕生以来、人類は食物獲得のためによく身体を動かし、食物に恵まれることなどはほとんどない環境で数十万年を生き延びた。この間、生存のための適応としてエネルギー摂取効率を高める進化を続けた。ところが、現代になって高カロリー食が市場に溢れ、身体の活動は余暇のスポーツにとどまるようになったが「身体は過去の進化の刻印」をとどめたままなのだ。
世界的にみた日本の肥満度はWHOのランキングなどでも下位にあり、ほとんど問題なさそうだが、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2015年)では男性のほぼ3人に1人が「肥満者」と報告されている。評者のライフネット生命創業者、出口治明さんは、人間ドックで3~5キロ体重を減らすよう言われた直後の本書を見つけ手にとったという。「素晴らしい本だった」と出口さん。肥満対策は多層的・統合的である必要が分かり「目から鱗が落ちた」と述べている。
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