数々の有名ブランドを持つ大手アパレル会社のファミリーセールは、社員や取引先の家族らを対象にしたクローズドな「謝恩セール」だったが、近年では、有り余る在庫処分の様相だ。インターネットで招待券配付を告知する一方、開催の頻度も増している。「2000円均一」のサービスワゴンのなかには、1万5000円の"正札"タグがついたシャツが並ぶこともあるという。
本書はアパレル業界の現状をこう指摘する。
「需要に関係なく、単価を下げるために大量生産し、売り場に商品をばらまくビジネスモデルは極めて非合理的だが、麻薬のように、一度手を染めると簡単にはやめられないものだった。ムダを承知で大量の商品を供給しさえすれば、目先の売り上げが作れるからだ」
現状に対する警鐘だけではない。評者の紀伊國屋書店新宿本店第二課の大矢靖之さんによれば「業界についての検証と警鐘、そして提言の著作」。著者は日経BPの記者。アパレル業界の「川上」(生地や糸を生産)から「川中」(アパレル企業)をへて「川下」(百貨店など小売)までを取材し、衰退の現場をうきぼりにする一方、新しい取り組みを紹介する。
新時代のビジネスモデルとして評者が注目したのは、新興セレクトショップや独自ブランドを展開する「TOKYO BASE」。同社の谷正人CEO(最高経営責任者)は、一族が静岡・浜松で百貨店「松菱」を経営していたが、高校生の時に経営破たんした経験を持つ。経営者として「百貨店を反面教師にする前提でビジネスを志しました。基本的に百貨店の反対のことをしています」。通常のアパレルが原価率20%のところ、同社のブランドは50%で品質の違いをだれにでも分かるようにしている。
「小売業全般の人たちが事業を省みるためにもお薦めしたい」と評者。内容はタイトルとはうらはらに「誰がアパレル業界を救えるか」のようだ。
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