著者は長く英国に住み、保育士として働く一方、ライター、コラム二ストとして活動している。英国社会でみられる矛盾をコラムなどで指摘しているが、本書は、かつて勤務した無料託児所の経験などから、同国の「底辺」をレポートしたもの。
評者の神戸女学院大学名誉教授、内田樹さんは「社会福祉というのは弱者自身のためというよりその子どもたちのためのものだという考え方を私はこの本から教えられた」という。
本書によると、英国には親子3代にもわたり生活保護で暮らすような「新たな階級」である「アンダークラス」がいる。それらの人々にも労働させろという声が強まり保守党政権は、支持率維持のため2010年以来、福祉目的の支出を大幅に削減した。
生活保護が打ち切られ、その最大の被害者は受給者の子どもたちだったことが分かる。親たちは住むところも、食事にも身に着けるものにも事欠くようになり絶望して子どもたちに暴力をふるう。子どもたちは心身に深い傷を負う。
評者は、この英国発のレポートをすべての人に読んでほしいと願う。「事情は日本と同じだ」と思うから。「社会福祉先進国であった英国においてさえ、一方で社会福祉制度の受益者たちは底なしのモラルハザードを起こし、他方にそんな連中は餓死しても自己責任だと言い放つ人間が登場しているのである」。子どもたちに親の責任を引き継がせてはならないと強調する。
「アンダークラス」に固定され、心身に深い傷を負う子どもたちは何に救いを求めることになるのか。どうすれば救われるのか。少なくとも子供たちに、階級闘争をさせるのではなく、評者同様、つねに社会的上昇のチャンスを確保しておかなければならないという思いを強くした。
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