私たちがふだん目にしているおなじみのインターネットの世界は表層ウェブ。その裏側には、検索エンジンだけではたどりつけない巨大な深層ウェブが存在しています。本書では、その深層ウェブ(ダークネット)の住人たちを取材・調査し、その闇の世界を明らかにしました。
ダークネットは、力と自由が司る世界です。あらゆる欲望の探求、あらゆる暗い衝動による行動、あらゆる神経症への耽溺を拡大してきました。その拡大は、すなわち革新的で危険なサブカルチャーである、荒らし、ポルノ製作者、麻薬の売人、ハッカー、政治的過激派、コンピュータ科学者、ビットコインプログラマー、自傷行為者、摂食障害者、リバタリアン、自警団員、サイファーパンク、アナルコプリミティビスト(無政府原始主義者)らの成長を意味します。
彼らがダークネットでコミュニティをつくり活動する傍らで、私たちはそんな世界とは無縁と思い込んでいます。しかし、著者によれば、最短3クリックでその世界に足を踏み入れられるといいます。誘惑に負ければ、そのまま迷宮の世界に突入。じつはそれだけ私たちの身近にある世界ともいえます。その実態は過激でありながらも、それが日常化することで、その過激度は薄まってしまいます。たとえば拒食症のフォーラムで見る激やせの写真は、何度も見ればその異常さを気に止めることもなくなります。
ダークネットは、表層ウェブの発展以上に急激に拡大してきました。そして確実にいま社会に根を下ろしているという衝撃的な事実を、このルポルタージュは私たちに突きつけています。
書名:闇(ダーク)ネットの住人たち デジタル裏社会の内幕
著者:ジェイミー・バートレット
訳者:星水 裕
解説者:鈴木謙介
発売日:2015/8/29
定価:本体2000円(税別)