クリエイティブな63のエピソード集。その一つひとつがずば抜けて面白く刺激的。“気づき”や“実践”の重要性をも示唆していて、読んだその瞬間、その場で気分が昂揚すること間違いなし。
たとえば、「クラスタリング」。
シーナ・アイエンガー米コロンビア大学教授は、人がいかに選択をするかについての研究を専門としている。ロシアで行ったグループインタビューでのことだ。研究チームは、参加者のためにドリンクを用意した。「定番のコカ・コーラ」「ペプシ・コーラ」「ダイエット・コーク」「ダイエット・ペプシ」「スプライト」「ドクターペッパー」「マウンテンデュー」の7つ。しかし、ロシア人参加者は、選択肢は一つと受け止めた。缶入りの炭酸飲料だけ。彼らにとってブランドはうわべ、缶についている名前にすぎなかった。ブランドだらけの国アメリカで育ったアイエンガーは驚いた。そもそも人は数多くの選択肢があるとは考えない、そんなものを必要としていないのだ。
こんなエピソードもある。「“ウィン・ウィン”を手にするために」
テレビ好きの娘に想像力と考える力を養ってほしいと、娘が気に入りそうで、見る価値のあるアニメを探した。見つけたのが、シェイクスピアの全戯曲をアニメ化したシリーズ。娘は熱中し、知らず知らずのうちに、シェイクスピア作品に親しんでいった。愛と名誉、混乱と裏切りの物語に。登場人物の衣装はきらびやかで、言葉遣いは優雅だった。いかにも小さい女の子好みだ。効果のほどは、ある日のキッチンで知った。床の上に大量のミルクがこぼれ、娘と息子がやましそうな顔をしていた。「誰がミルクをこぼしたんだ?」
娘は立ち上がって胸を張り、私の目をまっすぐに見てこう言った。「わたしがやったと言うのか。そなたの血まみれの頭を、私に向かって振るな」。こんな小さなマクベス夫人を誰が怒れるだろう。
以上ほんの触りだけの紹介だが、面白さの一端はうかがえただろうか。こらからの人生をクリエイティブに過ごしたいあなたには、ぜひご一読をお薦めします。
書名:プレデターシンキング/略奪思考 欲しいものはすべて「誰かのもの」
著者:デイブ・トロット
訳者:服部真琴
発売日:2014/11/21
定価:本体1600円(税別)