まずはこんな話から。よく知られているハロー効果。美人やイケメンの人に会うと、頭もキレキレで何をやっても秀でているなんて思いこんでしまうけれど、実際はそんことはない。逆もある。デビル効果。ふだんからダメダメの人がたまに大成功しても、皆ウソだと思うのはこれ。
こんな紹介は序の口。こんな事例もある。その日のパイロットの訓練で、非常にタフで優秀な飛行を達成した練習生を上官がほめたとする。翌日は得てして、凡庸な飛行になってしまう。また逆にミスが多かった練習生を叱り飛ばすと、翌日は、ミスが出なくなることが多い。この結果をみた上官がほめた練習生の翌日の成績が悪いのなら、ほめるのはよくないとなった。じつは、こうしたケースでは、平均に回帰しているだけであるという。優秀な飛行をしたのは、その時だけの偶然であって、翌日は普段の飛び方になったわけだ。ミスを連発した練習生もたまたまこの日は調子が悪かっただけで、翌日は本来の飛び方に戻っただけ。平均に回帰したということだ。
つづく例も統計。「大数の法則」をご存じだろうか。ある町に産婦人科病棟が二つあるとしよう。大きいほうは1日平均45人の新生児が誕生。もう一方の小さいほうは15人。年間を通じて男女の新生児の比率は半々。ここで問題。その日に生まれた新生児の6割が男の子である日数は、どちらの病院が多いか。
ほとんどの人はどちらも同じと答えるが、それは誤り。圧倒的に小さい病院のほうが多い。サンプル数が少ないほど偶然に左右されるのだ。ちなみにサンプル数が多ければ多いほど信頼性が高くなることを「大数の法則」という。
上記の例ばかりではなく、人間がとらわれやすい思考の罠は案外多い。この本でさまざまな事例を知っておけば、役に立つこと請け合いだ。
書名:不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100
著者:スチュアート・サザーランド
訳者:伊藤和子/杉浦茂樹
発売日:2013/11/29
定価:2,100円(税込)