プレゼンなどに備えて資料を作ろうとした際、参考となりそうな情報はネット上にいろいろ転がっているけれども、どれもちょっとずれている気がする……そんな経験をした人は少なくないと思います。
実は、このようなときに役に立つのがデータ・統計分析の知識。うまく使いこなすことができれば、たとえ欲しいと思えるような資料が手に入らなくても、既存にあるデータをうまく活用して、説得力のある資料を作成することができるのです。
本書『「それ、根拠あるの?」と言わせない データ・統計分析ができる本』は、冒頭に挙げたような事柄を含めて、データ・統計分析の知識をどう実際のビジネスの場面で活用していくかについて、分かりやすく解説した一冊です。
本書に書かれている事柄の一例として、ここでは「集め方と分析の視点」の章で取り上げられている“データ収集のポイント”について、見ていくことにします。その主な内容は以下のようになります。
①仮説の一歩外までデータを集める
ある仮説を立て、それを検証するためにデータを集めても、集めたデータが最小限のものであると、予想外のデータが出てきた際に苦労してしまいます。
たとえば、自社内の売上げのみでなく他社の売上げも調べておいたり、調査の対象となる地域以外のデータもあらかじめ用意しておいたりすると、その後、仮説を検証しようとする場合にも、作業がスムーズになることがあります。
②データの“軸”に注目する
ビジネスで使われるデータの多くは、「時間」「場所」など、さまざまな軸を持っています。この軸にそってデータを分解したりまとめたりすると、同じデータでも、結果が違うものになることがあります。
たとえば、売上データを月次・週次・日次と分けていくことによって、月次単位で見てみると上がっているように見える一方、週次の場合では月の前半に比べて後半の週が顕著に下がっていたりする、といった発見が出てくる場合があります。
③目的に合った「データの範囲」を意識する
上記の②において、月次・週次などに分けて見てみることで、違った種類のデータが出てくる場合があると書きましたが、重要なのは、ただこの事実の発見だけで終わるのではなく、自分が立てた仮説を検証するために、どの範囲でデータをとるのが適切なのかを意識することです。
そのうえで、週単位・月単位など、データの範囲を変えるとなぜ別の特徴が出てくるのか、要因を考えていきましょう。このような作業を行なっていくことで、結果的により深い分析ができるようになります。
④「外れ値」は理由を考えて処理する
データを集めていると、全体の中で、明らかに他のものとは異なる、突出した数値が入ってくることがあります。
たとえば、購入金額の平均単価が2000円程度であるドラッグストアにおいて、ある特定の一日だけ、何人かが3万円以上購入した場合があったとします。結果として、その日の平均単価が他の人比べて吊り上ってしまう要因にもなりますが、この結果だけで一概に、「この日はほかの日に比べて店の調子が特に良かった」とは必ずしも言えません。
抽出したデータに外れ値が入っていること自体は間違いでは決してないのですが、もし、正当な理由がなくてこのような数値が紛れ込んでいたならば、分析前にそのデータははずしておくべきでしょう。
本書では、このようなデータ収集のポイント以外にも、ざっくりと大きさを知る「平均・中央値」、リスクを見積もる「標準偏差とヒストグラム」、打つべき手を決める「相関分析」、企画の計画性・収益性をつかむ「単回帰分析」など、データ・統計分析の実践的な内容をいろいろと紹介しています。
また、紹介されている分析手法はエクセルを活用することによってできるものなので、特別な数学の知識などは必要ありません。
皆さんも是非、本書に書かれている「根拠のある資料の作成方法」を身につけてみませんか。
書名:「それ、根拠あるの?」と言わせない データ・統計分析ができる本
著者:柏木吉基
定価:1680円(税込)