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科学の世界で今、もっとも伸び盛りの領域は?

素粒子論に進化論、宇宙科学や医学、地球科学など、さまざまな領域で科学は進歩をつづけているが、どの領域でも研究の進歩は遅くなったり速くなったりするもの。あるとき長足の進歩を遂げたかと思うと、その後何十年も停滞することもある。

 では、今この時代に、もっとも著しい進歩を遂げている科学分野は何か。

 このように問われれば、その代表格の一つとして必ず挙げなければならないのが、 太陽系以外の惑星の研究、つまり「系外惑星」の研究だろう。

 1990年代中頃に最初の系外惑星が発見されるまで、知られている惑星はこの太陽系を回るものだけだった。それが今や、数光年以上の遠く、場合によっては1万光年以上の彼方にある惑星の存在が確認されており、その数は500個を超えているのである。現在の系外惑星探査は、まさに発見に次ぐ発見。これほどまでに数多くの成果が短期間に上がっている領域は、科学界でもそうはない。

 その系外惑星研究の最前線をまとめた本が出版された。『もう一つの地球が見つかる日――系外惑星探査の最前線』(草思社)である。著者のR・ジャヤワルダナ博士は、系外惑星を初めて画像として捉えるという画期的な成果を出した研究者である。

 本書を読めば、系外惑星探査で驚くべきなのは、発見されている惑星の数だけではないこともすぐにわかる。惑星の特徴についても、今やかなりのことがわかっているのだ。それら惑星の大きさや質量、公転周期、表面温度、惑星の物質構成、場合によっては大気の構成、自転周期もわかる。それだけでなく、気象現象(強力な風の発生、温度変化など)までも、その徴候が観測されるようになっている。さらには、系外惑星に生物がいるかどうかを観測から知るという課題にも、研究者たちは懸命に取り組んでいる。系外惑星に水や酸素があるか、生命活動の徴候を示す物質(メタンなど)が存在するかを観測する手法の研究も進められており、そう遠くない時期に「生命の証拠」が手に入る可能性が高まっているというのである。

 系外惑星探査の驚くべき成果は、このわずか十数年のあいだに急激に得られたものだ。それまでの系外惑星研究といえば、天文学の中でもマイナーな存在で、予算も世間の注目も集められず、研究者たちは数十年間にわたって不遇の時代を過ごしてきた。その状況を一変させたのは、望遠鏡技術の急速な進展と、研究者たちの創意工夫による新しい観測方法の開発である。本書ではそういった技術的背景や、状況を覆した研究者たちのドラマなど、系外惑星探査の歴史的・人間的な側面も描かれていて、面白い。本書の著者は現役の研究者であり、まさにこの領域のただ中に身を置いているので、その文章からは、発見に沸く現場の興奮や、ひりつくような研究者間の競争の様子までが伝わってくる。

 科学界で最も熱い領域で今、何がおきているのか。科学の今を知りたいのなら、ぜひ読むべき一冊。


もう一つの地球が見つかる日――系外惑星探査の最前線
レイ・ジャヤワルダナ著/阪本芳久訳
2012年

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