集英社の創業85周年企画として昨年6月刊行が開始されたコレクション「戦争と文学」(全20巻+別巻1)。編集委員として浅田次郎、奥泉光、川村湊、高橋敏夫、成田龍一、編集協力として北上次郎の各氏が関わった。単行本未収録作品を含む中・短編小説を中心に、詩歌や戯曲まで幅広い分野をカバー、斬新で美しい装丁も話題となったこの全集の第11回目の配本である。
17世紀の薩摩藩の侵攻、『琉球処分』と呼ばれる明治政府による強制的な廃藩置県、多くの犠牲者を生んだアジア太平洋戦争での激戦。そして1972年までの米軍統治。返還後も基地の島として、普天間問題など多くの問題を抱える沖縄。
これらの問題に抗い、文学はどのような作品を残してきたのか?
長堂英吉・知念正真の小説と山之口貘の詩が描く近代沖縄。大城立裕・又吉栄喜・目取真俊らが描く沖縄戦から本土復帰以降までを背景にした作品。さらに田宮虎彦・灰谷健次郎・桐山襲ら本土(ヤマト)の作家たちが描いた沖縄の姿。
今までになかった編集方針で編まれた「闘うオキナワ」の真実。
沖縄を知るために多くの日本人に読んでいただきたい一冊だ。
月報では、沖縄出身者初の芥川賞作家・大城立裕氏が、戦争中の中国での貴重な体験談を語っている。
「戦争と文学」公式ウェブサイト
http://www.shueisha.co.jp/war-lite/【コレクション 戦争と文学】LINE UP(★は既刊)
(1)『朝鮮戦争』6月刊行/金石範「鴉の死」他収録(以下同)
(2)『ベトナム戦争』★/開高 健「岸辺の祭り」
(3)『冷戦の時代』10月刊行/五木寛之「蒼ざめた馬を見よ」
(4)『9・11 変容する戦争』★/リービ英雄「千々にくだけて」
(5)『イマジネーションの戦争』★/芥川龍之介「桃太郎」
(6)『日清日露の戦争』★/萩原朔太郎「日清戦争異聞(原田重吉の夢)」
(7)『日中戦争』★/胡桃沢耕史「東干」
(8)『アジア太平洋戦争』★/太宰 治「待つ」
(9)『さまざまな8・15』7月刊行/中野重治「四人の志願兵」
(10)『オキュパイド ジャパン』8月刊行/志賀直哉「灰色の月」
(11)『軍隊と人間』11月刊行/細田民樹「日露のおじさん」
(12)『戦争の深淵』2013年1月刊行/大岡昇平「捉まるまで」
(13)『死者たちの語り』★/小川未明「野ばら」
(14)『女性たちの戦争』★/大原富枝「祝出征」
(15)『戦時下の青春』★/中井英夫「見知らぬ旗」
(16)『満洲の光と影』★/伊藤永之介「万宝山」
(17)『帝国日本と朝鮮・樺太』9月刊行/中島 敦「巡査の居る風景」
(18)『帝国日本と台湾・南方』12月刊行/佐藤春夫「奇談」
(19)『ヒロシマ・ナガサキ』★/原 民喜「夏の花」
(20)『オキナワ 終わらぬ戦争』5月刊行/長堂英吉「海鳴り」
書名:コレクション 戦争と文学 「オキナワ 終わらぬ戦争」
著者:山之口 貘 他
発売日:2012年5月2日
定価:3780円(税込)