1984年(昭和59年)と85年に起きた、昭和最大ともいわれる未解決事件のグリコ・森永事件。同事件を題材にした小説と聞けば、「かい人21面相」を知る世代にとっては、結末はどうなっているのかと手が伸びそうだ。
やはりグリコ・森永事件に着想を得た高村薫さんの「レディ・ジョーカー」は97年に単行本化され、文庫本と合わせた累計の発行部数は100万部を超える大ベストセラーになり、映画化、テレビドラマ化もされた。
「かい人21面相」を知る世代は、事件からしばらくたってから、友人や知人らと、金の受け渡しについて指示する電話の声の子どもはどうしているかなどと、想像力をたくましくて話したことがあるのではないか。
物語のプロローグは、まるで直球で、読者の興味のど真ん中を狙ったかのよう。父親の遺品のカセットテープをいれたCDラジカセから、言葉と言葉のつながりが不自然な子どもの声。しばらくして、聞いていた男は自分のものだと気付く...。そして、それは31年前に発生して未解決のままの「ギンガ萬堂事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった――。
物語はテンポよく進むのだが、ここは現実の事件ではどうだったのかと気になって調べてしまうのは、インターネット時代だからこその寄り道か。何度読んでも同じところでとまってしまう。
著者の塩田武士さんは新聞記者経験もあるだけに、その関係シーンはもちろんリアリティーがあふれる。最後に明かされるテープの動機は、印象が分かれそうだ。
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