2023年9月、「広告をとらない雑誌」として知られる生活総合誌『暮しの手帖』(暮しの手帖社)が創刊75周年を迎えた。
これを記念して、初代編集長・花森安治以来の歩みを振り返る『創刊75周年記念別冊 暮しの手帖』と、今とこれからの暮らしに向き合う記念特大号、『暮しの手帖』5世紀26号が発売された。暮らしの手帖は、100号を1世紀として数え、2019年7月号から5世紀に入っている。
記念別冊は、1948年、戦後まもない東京で産声をあげた『暮しの手帖』の「自己紹介」をテーマとしたもの。
広告をとらない雑誌として、時代の変化にもまれながら残ることができたのはなぜだったのか。変わらない理念とは? 戦後から今日までのアーカイブ記事を紹介しながら、日本の暮らしに大きな影響を与えたとされる75年間を振り返っている。
読者が選ぶ「わたしの暮らしを変えた記事」には、懐かしい誌面が満載。暮しの手帖とともに時代を歩んだ読者の、当時の思い出など、個性豊かな投稿が並んでいる。
また、飲食店プロデューサーで、料理人の稲田俊輔さんが「バイブル」と呼ぶロングセラー、『おそうざい十二カ月』(1969年刊)と『おそうざいふう外国料理』(1972年刊)も特集。その魅力を稲田さんが語り、「とりのハンガリアふういため煮」「コンビーフスパゲチ」など厳選した傑作レシピ集が、「稲田さんがいま作るなら」と題された解説を加えて掲載されている。
ほか、ロング連載の秘話や誌面を収録。1954年に連載開始した『エプロンメモ』からは、昭和の暮らしが垣間見える22編が紹介されている。さらに、特別付録として花森安治のカット画をふんだんにあしらったステッカーが綴じ込まれている。
記念特大号『暮しの手帖』5世紀26号では、本誌の表紙画に、初代編集長の花森安治が愛用していた「ランプ」をモチーフとして使っている。
戦後まもない創刊時に掲げた、「けっして満ち足りてはいない暮らしに、かすかでも希望の灯りをともす」という志に立ち返り、「いまの暮らしや社会の課題」を解きほぐし、読者とともに考えを深めていく、そんな4つの大特集が組まれている。
第一特集「ずっと、食べていく」は、さまざまな情報が溢れるなかで揺らぎがちな「家のごはんで大切なこと」を掘り下げたもの。大原千鶴さんほか7名が、実生活の食事作りで直面した困難や喜びなどを語る読み物と、それに結びついた料理レシピという構成で、読者が「自分なりのよりどころ」を見いだすヒントをちりばめている。
第二特集「これからの暮らしの話をしよう」は、人気連載の執筆陣であるライターの武田砂鉄さん、画家のミロコマチコさん、評論家の荻上チキさんが、「いま会いたい人」を訪ねて語り合う対談(鼎談)記事。暮らしや社会を取り巻くいろいろなトピックに理解が深まる内容だ。
第三特集「あの人の本棚より 特別編」は、人気連載の特大版。角田光代さん、五味太郎さん、益田ミリさん、安田登さん、しりあがり寿さんの「本棚」が登場する。
第四特集「コロナ下の暮らしの記録」は、読者から投稿を募ったもの。記憶に新しい「コロナ下」は、一人ひとりにとってどんな日々だったのか。誰もが自分の暮らしと社会に向き合った、かけがえのない記録を読むことができる。
また、特別付録には、花森安治による創刊号の表紙原画と、連載陣の一人、ヨシタケシンスケさんによる「ひとりひとりの暮らし」を両面に配した大判ポスターがついてくる。
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