少女漫画でもギャグ漫画でも、登場人物の心情を豊かに表現する漫画家の東村アキコさんが、初めて「活字のみ」のエッセイに挑んだ。実はずっと以前から「本を書きたい」という思いがあったという。その夢を抱くきっかけになった作品とは?
子どものころから漫画が好きで、よく読んでいたのですが、本も同じくらい、たくさん読んでいたんです。好きな作家さんの本を全部読破したりしていました。中でも好きなのが向田邦子さん。脚本も含めてすべて読んでいます。向田さんは子どものころ鹿児島に住んでいらっしゃったので、なんかちょっと身近な感じがしたりして(東村さんは宮崎出身)。当時のエピソードが書かれた作品も好きでした。
短編集の『思い出トランプ』(新潮社)は、高校生の時に古本屋さんで出合ってからいつも持ち歩いて、繰り返し読んでいます。誰かに貸してなくなってしまったり、引っ越しの時にどこかにいってしまったりするたびに買い直しているので、人生でこの文庫本を10回くらいは買っているんじゃないかってくらい。
描写が素晴らしくて、情景が目に浮かぶんですよね。男女の距離感とか、あんまりべったりしていない感じもよくて、私の作品もかなり影響を受けています。今回、漫画ではなく文章を書こうと思ったのも、この一冊があったから。「いつか私も本を書いてみたい」というきっかけになった本です。
ちょっとした合間に読みやすいのもいいですね。名作なので読んだことがある方も多いかもしれませんが、まだの方はぜひ。若い方にもおすすめしたいです。(談)
今回、東村さんが書き上げた自伝エッセイ『もしもしアッコちゃん? 漫画と電話とチキン南蛮』では、幼少期から高校生までのおもしろエピソードと、人生の転機に必ずつきまとった「電話」の話がユーモアたっぷりに綴られている。漫画雑誌「りぼん」や「ぶ~け」をはじめ、「ドラゴンボール」や「北斗の拳」、「うる星やつら」など昭和末期の人気漫画にまつわる思い出話も満載だ。
執筆の裏話や東村さんの卓越したギャグセンスとポジティブ思考を育んだ故郷、宮崎への思いを語ったインタビューはこちら。
■東村アキコさんプロフィール
ひがしむら・あきこ/漫画家。1975年、宮崎県生まれ。1999年、「フルーツこうもり」でデビュー。『ママはテンパリスト』(全4巻/集英社)が100万部を超えるヒットとなり、若い女性を中心に人気を集める。2010年、ファッションをテーマにした『海月姫』(全17巻/講談社)で講談社漫画賞。自身の半生を描いた『かくかくしかじか』(全5巻/集英社)で第8回マンガ大賞、第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞。『東京タラレバ娘』(全9巻/講談社)で米国アイズナー賞最優秀アジア作品賞をそれぞれ受賞。2020年、『偽装不倫』(全8巻/文藝春秋)のウェブトゥーンなどへの功績によって、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。同年、『雪花の虎』(全10巻/小学館)で第47回アングレーム国際漫画祭ヤングアダルト賞受賞。先駆的な活動で日本の漫画界を牽引するのみならず、韓国、米国、フランスを始めとした海外でも広く読者に支持されている。
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