日本人男性は働き者なのか? それとも怠け者なのか?
20世紀末、日本人男性は良くも悪くも「働き者」のイメージを持たれていた。「24時間働けますか」や「モーレツ」などの古い流行語の存在がそれを表している。だが、21世紀の今、家事・育児をまったく手伝わない「怠け者」としてのイメージが強くなり、これまでとは違う「イクメン」になることが求められるようになった。
はたして、日本人男性は働き者なのか? それとも怠け者なのか? 2023年4月17日に発売されたビジュアル書籍『地図は語る データがあぶり出す真実』(日経ナショナル ジオグラフィック)には、その真相を物語るデータマップが掲載されている。
データマップにまとめられているのは、OECD(経済協力開発機構)が調査した世界各国の1日あたり労働時間の統計だ。この調査では、男女間の労働時間の差や、労働時間に占める「有償労働時間」と家事などを含む「無償労働時間」の割合も明らかになっている。
まず驚くのは、日本人男性の無償労働時間がOECD加盟国で最も短いという事実だ。その長さは、(休日など含めて)1日あたり平均40分。男性の無償労働時間が最も長いデンマーク(3時間6分)と比べると、わずか5分の1にすぎない。無償労働時間の男女比格差も世界最大という。やはり日本人男性は、家庭内では「世界一の怠け者」なのだ。
だが同時に、日本人男性が「働き者」であるというイメージも間違っていない。2020年のOECD調査によると、日本人男性の有償労働時間はOECD加盟国で最も長い。その長さは、1日あたり7時間32分。OECD平均が5時間17分だから、日本人男性は世界平均より2時間以上長く働いていることになる。つまり、日本人男性は「世界一の怠け者」であると同時に「世界トップクラスの働き者」でもあるわけだ。
有償労働時間と無償労働時間を足した「総労働時間」で見ても、日本人男性は世界3位(6時間13分)の働き者。怠けて家事をサボっているというよりは、「仕事をこなすだけでヘトヘトで、とても家事はできないよ...」というのが実感なのかもしれない。
ところが、そんな働き詰めの日本人男性よりもさらに労働時間が長く、大変に負担がかかっている人々がいる。日本人女性だ。その総労働時間は、驚異の8時間16分。もちろん、世界1位の長さだ。誇れることではないのだが......。
ジェンダーギャップ以外にも、日本について興味深いデータがある。
これは、「パスポートの強さ」と「開放度スコア」である国家の総合的な「旅行のしやすさ」を可視化した図だ。日本は左上にいる。パスポートの強さは、その国のパスポートで渡航できる国の多さを、開放度スコアは、その国にパスポートだけで渡航できる国の多さを表している。
日本のパスポートはとても強い。持っているだけでほぼすべての国へ渡航することができ、韓国やシンガポールと並んで、俗に「世界最強」などと言われるほどだ。だが一方で、「開放度スコア」はかなり低い。シンガポールや韓国よりも遥かに入国のハードルが高いのだ。日本は、どこへでも行けるが、どこからでも来られるわけではない国なのである。
このほか本書には、捕鯨船の経路や奴隷貿易から、国ごとの幸福度、汚染物質の出所まで、世界のあらゆるデータを地図というビジュアルで可視化している。「この100年、地球はどれくらい暑くなった?」「世界でいちばん不便な場所はどこ?」など、さまざまな好奇心を満たせる1冊だ。
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