あの子より愛して
もし、羨ましいと思っていた人物になり代われるとしたら、あなたはどうするだろうか? その人物になりきって欲しかったものを手に入れる? それとも――。
漫画『あの子より愛して』の主人公は、なり代わることを選択した。
主人公の「私」は、ちょっと派手めの可愛らしい少女。冒頭では「アンナ」と名乗る「私」は、初対面のはずの男・ハルヤに積極的にアプローチをしかけていく。「ハルヤくん本当に優しいね!」と、あざとすぎるくらいにアピールする。
しかし、本当の「私」はそんな人間じゃない。そもそも名前も「アンナ」ではない。
どういうことだろうか。――実は、派手な装いも「アンナ」という名前も、全部亡くなった妹のもの。
「私」は、以前はずっと地味でコミュニケーションも苦手だった。一方、妹の杏奈はその真逆で、派手で可愛らしく人望も厚かった。「私」はずっと、そんな妹にコンプレックスを抱いていた。ネット上の知り合いだというハルヤの写真を見せられたときには、妬みの感情が募った。
しかし突然、杏奈が急逝する。「私」はそれを悲しむ――ことはなかった。
「フキンシンだけど思ったの。『これはチャンスだって』」
「私」は妹になり代わり、「アンナ」として生きることに決めた。「アンナ」として振る舞い、ハルヤに近づいた。そして見事、ハルヤの側も乗り気だったこともあり、交際することに成功する。
これだけでも十分に複雑だが、ハルヤの側にも隠された思惑があったことで、事態はさらに複雑さを増していく。
ハルヤには溺愛する弟がいる。目に入れても痛くないとばかりに、弟のことを可愛がっていた。
「兄ちゃんがついててやらないとダメなんだろ」
そんなある時、弟がいじめられたことを知る。犯人を聞くと、それはどうやら派手な女らしい。――そう。実はそれは杏奈のこと。ハルヤは復讐のため、「アンナ」と交際したのだった。
もちろん、復讐の相手が既に亡くなっていて、目の前の相手が偽物だとは知る由もない。それぞれの思惑が複雑に絡み合い、事態はさらに混迷を深めていく。
他人になり代われば、その咎までも背負わなければならない。思わぬ落とし穴にゾクゾクする、スリリングな作品。
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