20代のころ早くも精力の減退を感じていた著者が復活し、50代となった今でも現役のAV男優でいられる理由、それは「食事」にあった――。
田淵正浩さんの本書『レジェンド男優の食事術』（秀和システム）は、「『レジェンド』と称されるAV男優は何を食べているのか？」というちょっと珍しい切り口から食事を見直すヒントを紹介したもの。
「いろんなイメージを持たれる職業だろうと思うのですが、一つ確実に言えるのは、とにかくハードな職業ということです」
田淵正浩さんは、1967年生まれ。90年デビュー。2019年には現役30年を迎えた。現在活躍する約80名のAV男優のなかでも、その伝説的なキャリアから「レジェンド」と呼ばれる。
もともとは体力もなく、暴飲暴食を重ねる悪癖もあったという。しかし、肉体が資本のハードな業界で生き残るため、食事を中心とした健康法を考案、実践。現在、講座やワークショップの開催、メディア出演などを通じて、自身の知識と経験を伝える活動もしている。
はじめに、AV男優という職業の裏側を書いている。
年間に発売されるアダルトビデオの新作は、2、3万点。AV女優の場合、1本だけ出演する人もいれば、毎日のように撮影がある人も。専業・兼業を問わず、出演したことがある人を合計すると数千名いるという。
一方のAV男優の場合、その人数は約80名。ケタの違いに驚く。そのため1日1現場とは限らず、場合によって2、3本と現場を掛け持ちすることも。「1日1現場でも、楽な仕事ではありませんが、複数現場の掛け持ちは本当にハードです」。
「現在53歳の私は、自分で言うのもなんですが、現役バリバリで仕事をこなしています。（中略）今の私は、自らのコンディションに自信を持っていますが、それも挫折を出発点に得たものでした」
田淵さんは20代後半のころ、体力と精力の明らかな減退を感じていた。「一つの現場をこなすだけで精一杯、毎日目が覚めると憂鬱でしょうがない」というスランプ期に突入。
「このままでは仕事を続けられない」という危機感から、あらゆる健康法を試すことに。その結果、とくに食生活に問題があることがわかった。当時は、ストレスの反動でドカ食いしていたそうだ。
そして、現在ベースにしているのが「ナチュラル・ハイジーン」。これは19世紀のアメリカで生まれた、食事をメインにした健康法。食生活はベジタリアンに近いという。
科学の研究者ではないため、本書の内容は「科学的なエビデンスに則っているとは言えません」。しかし、自身の体で効果を証明し続けてきたからこそ、胸を張る。
「生活習慣を改善した結果、先述したようなスランプを脱し、ハードなAV男優の仕事をしっかりとこなせるようになったことは、まぎれもない事実です」
田淵さんは基本的に「理想はこうである」という基準を示しつつ、「できる範囲でなぞってくれればOK」というスタンス。意外にも、ほどほどの「ゆるさ」がある。
「AV男優だから、ということではなく、どんな職業の方にも、そして女性にも参考にしていただける健康法だと考えています。ぜひ、色眼鏡を外して、最後までお読みいただければ幸いです」
本書は「火は通さない、生食で！」「夜の『性活』に向けてお酒は飲んでいい」「カルビもウナギもOK。脂はセックスの燃料」など、レジェンド男優ならではの食事術を披露している。
第1章 食べ物よりも食べ合わせと食事時間が重要
第2章 間違いだらけの食材選び、「正解」はこれだ！
第3章 「何を食べるか」だけではなく「どう食べるか」
第4章 じつは食べていけないものは、ほとんどない
第5章 夜の「性活」が楽しくなれば、朝も疲れなく快適になる
ここでは、田淵式食事法の基本のキである「1日を3つの時間帯『排泄→食事→消化』で考える」を紹介しよう。
田淵さんは基本的に、毎朝4時起床、22時就寝、という生活を続けている。このうち4～12時は「排泄」の時間帯。ここで溜まった排泄物やガスを出す。12～20時は「食事」の時間帯。ここで食事を摂る。20～翌4時は「消化」の時間帯。ここでは基本的に食事を摂らない。
これは、日の出と一緒に起きて、日が沈んだら早めに寝るという「宇宙や地球の運行」をベースにしているそうだ。1日24時間を3つの時間帯に分けるサイクルに慣れてくると、「歳をとっても若さを保てます」。
おわりに、「食事は、本当に人生を変えます」と強調している。
「食生活を見直して、撮影を楽しく元気にこなせるようになると、撮影以外にも、人生のあらゆる局面でもイキイキと過ごせるようになりました」
レジェンドの伝授する「過酷なAV業界で50歳過ぎでも現役を貫ける秘訣」を読めば、いろいろな意味で「人生がみなぎる活力がもどってくる」かもしれない。
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