クリスマスシーズンを迎えるこの季節。恋愛を意識した作品を読んでみたいと思う方に、おすすめの作品がまた一つ登場した。
本作、『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(小学館)は、特別なこともなく、ありふれた学生である主人公が、群れずに凛とした女性に出会い、そして、惹かれていく物語。
今、まさに学生で恋をしている方はストレートに主人公の心の動きに夢中になれるだろう。そして、とうに卒業している元学生という大人は、心に焼き付いた過去の恋を思い起こすだろう。
本作は、作家の純粋な感性をそのまま書き綴った恋のストーリーだ。
なお、この物語は、それだけではない。主人公を通して、自分の居場所はどこか、人とのかかわりや関係性とは何かなど、生きるということ自体を改めて考えさせられる一面がある。ゆえに、作品の意図するところではないだろうが、新型コロナウィルスによって社会情勢の先行きが不透明な中、改めて自分を見つめるきっかけにもなる要素がちりばめられている。ありがちなサラサラした恋愛ストーリーではない。
本作『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』の作者は人気芸人の福徳秀介(ジャルジャル)さんだ。
関西大学で文学を学んだ福徳さんが4年の歳月をかけて執筆したのが本作。多忙を極める中でも、担当編集者からの要望にも応え、改稿も含めて一途に執筆に向き合ってきたそうだ。
いったいどんな思いで、4年をかけて執筆したのだろうか。BOOKウォッチ編集部では、発刊に当たり福徳さんに話を聞いた。
―― なぜ、恋愛小説を書こうと?
福徳 誰しもが恋愛をしてきていると思うのです。世界中のカップルには、それぞれの悩みやスタイルがある。そう思うと恋愛は面白いです。
例えば、会社の中に怖い上司がいたとして、その上司も、きっと胸を熱くして恋愛をしてきていると思うと面白いし笑えてくる。恋愛はすごいなと思ったのが恋愛小説を書こうと思ったきっかけです。
―― 福徳さんにとっての恋愛とは?
福徳 (主人公のような年代の)10代~20代の恋愛は、それがあるから頑張れるという、僕にとってはガソリンのようなものでした。30代になると、それだけではないのですが。
―― 冒頭に「僕の居場所はここ(大教室)じゃない」と出てきます。現実の中で、同じように「自分の居場所はここじゃない」と感じている方もいると思うのですが、伝えたいメッセージはありますか。
福徳 自分の居場所はここじゃないと思われている方は、きっと、居場所はそこじゃないと思います。ただし、別の居場所が、必ずどこかにあると思います。
そして、その居場所は、ひょっとしたらあなたが今、ここじゃないと思っている場所の中のどこかかもしれないし、全く別の場所かもしれません。
小説では、「雲は空にしかいられない」という書き方で、そのことに触れています。
―― 4年にわたって執筆に取り組んだそうですが、福徳さんにとって「書くこと」とは?
福徳 お笑いは、人を笑わせることが唯一の目標なのです。
書くとなると、読むのは時間がかかるのに読んでもらわないといけない。読んでもらうからには、何かを感じてもらいたい。そういう意識をもって取り組むのが、僕にとっての書くことなのです。
―― それだけの意識をもって書いた作品、若い世代の方にもおすすめですね。
福徳 難しい表現はなるべく使わないで書きましたので、普段は本を読まないという方にも読んでいただけたらと思います。この本を読めば、きっと、恋っていいなと思っていただけると思います。
福徳さんは、このように、恋愛小説を書こうと思った思いや、執筆する姿勢を語ってくれた。そして、「この本は本気で書きました」と真剣なまなざしで話す姿が印象的だった。
なお、本書は関西弁で綴られている。慣れない方は読み初めは会話のイントネーションやリズムがつかめないかもしれないが、読み進めるうちに主人公の放つセリフから伝わってくる心情や情景が読み手になじんでくる。文字で物語を楽しむことの味わいも感じられる物語だ。
ぜひ、有名人の本という先入観を捨てて、小説に真摯に向きあった書き手の本として読んでみることをおすすめしたい。
プロフィール
福徳秀介(ふくとく・しゅうすけ)
1983年兵庫県生まれ。関西大学文学部卒。同じ高校のラグビー部だった後藤淳平と2003年にお笑いコンビ「ジャルジャル」を結成。
TV、ラジオ、舞台、YouTubeなどで活躍中。M-1グランプリ、キングオブコントなどの賞レースの常連。キングオブコント2020で王者獲得。著作の絵本『まくらのまーくん』は第14回タリーズブックアワード大賞を受賞。近著に絵本『なかよしっぱな』(2019年、 小学館刊行)がある。
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