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「みんな心のどこかで、笑いたい気持ちがある」 ~麒麟・川島明に聞く~(第2回)

 漫才をはじめ、バラエティ番組、朝ドラ、MCなど多方面で活躍し、独特の存在感を放つ麒麟・川島明さん。前回の記事「お笑いは心を救う! いまこそ『タグ大喜利』で笑おう! ~麒麟・川島明に聞く~(第1回)」では、川島さんが「Instagramの日陰でコツコツやってきた」という「タグ大喜利」をムック化した『#麒麟川島のタグ大喜利』(TJMOOK)を紹介した。第2回は、多くの人が笑いを求めているいま、川島さんがどんな想いで本書を世に送り出したのかを聞く。

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写真は、麒麟・川島明さん。

4月のお笑いパワーを全部注いだ

―― 本書は発売前から話題になり、売切続出となりました。やはりいま、多くの人が笑いを求めているんだと思います。本書にどんな想いを込めましたか。

川島 コロナ騒動になる前、去年の秋頃に宝島社さんからお話をいただきました。Instagramは2年ほどやっていたんですけど、まさか本にしていただけるとは。そんな狙いもなく、自主トレーニングのつもりで、寝てるよりいいかなと思って楽屋とか移動中にやっていたものなんです。

 これまでInstagramでしか見られなかったデジタルなものが紙になる。このデジタルからアナログへの逆輸入がすごく嬉しくて。本棚に残るというのがね、書いていてよかったなと思います。

 たまたまこんな時代になってしまって、自分も4月は仕事が9割なくなりました。「さぁ、何しようかな?」と思ったときに、YouTubeをやっている人はそれでいいですけど、僕はそういうのを全部やっていなかったので、もう本当に4月のお笑いのパワーを全部この本に注ぎました(笑)

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写真は、本書『#麒麟川島のタグ大喜利』(TJMOOK)の表紙。

シリアスなのに笑える「タグ大喜利」

―― 思い入れのある一冊ですね。

川島 毎日「タグ大喜利」のことを考えて、起きたらもう思いつきも含めて全部、担当の方に送りました。「この本を出そう」と言ってくださった方も、「今すごく笑いが必要なのかもしれない」と動いてくださって。発売前から、自分にとってかなり感慨深いものがありました。先輩後輩も告知を手伝ってくれたおかげで、発売前から話題になって、本当にありがたい話です。

 今、みんなが笑えるものを求めているんだなと、すごく感じましたね。それが「タグ大喜利」でいいのかわかんないですけど(笑)心のどこかで、笑いたい気持ちがあるんだと思います。

 「タグ大喜利」の写真は、芸人のシリアスな顔を僕がカメラで撮っているんです。シリアスな写真にタグをつけて、けっこう笑えるものにしています。この本と今の社会は、状況が似ているのかなと。今は社会全体がシリアスですけど、この本で「フッ」と笑ってもらえたらいいですね。

 こんなタイミングでの出版になるとは、もちろんまったく計算していなかったですけど、いま、芸人としてめちゃくちゃやりたい時期なので、この本を出版できることが本当に嬉しいです。

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写真は、麒麟・川島明さん。

「タグ酔い」しないために

―― 「はじめに」と「終わりに」を見ると、手書きの文章とともに手描きのイラストが載っていますね。絵本の挿絵を思わせる、優しいタッチと淡い色合いが印象的です。

川島 本になる前の段階でガッと全体を見てみたら、全部大喜利なのでけっこう濃厚だった。これだと重たいし、本がちょっと冷たくなるかなと。そこで担当の方から「手描きでいくといいかもしれない」とアドバイスをもらって。全部タグでデジタルな感じだったので、ここで人間っぽさを入れようということで描きました。

 このコロナ騒動でバトンリレーが流行って、その中でにんじんのイラストを描いて回す「にんじんリレー」があったんです。ダレノガレ明美さんから回ってきて、絵具とスケッチブックを出して一生懸命描いたんですよ。本当はスマホで描いたヘタなイラストを笑うものだったんですけど、僕全然知らなくて。「誰がそんな本格的なのを依頼したんですか?」っていう(笑)でも、ダレノガレさんが「川島さんの本格的すぎる」というネタとして載せてくれました。

 

 その後も千鳥・ノブさんから亀のイラストを描くのが回ってきて、それも水彩画のめっちゃ真剣な亀を描いたんです。それを見た担当の方が「もったいないから、本に載せませんか」と言ってくださって。

 「タグ大喜利」のストイックなくらい濃い部分を、手書きの文章と手描きのイラストでチェイサーみたいに薄めていけるんじゃないかと。そこから、夜飲みながら犬とかチャーハンとかビールの絵を描いて。そうやって好きなものを描いて送っていったら全部載せてくれた、という背景があるんですよ。勉強しすぎたから一回外見るみたいに、イラストで一回ちょっと休憩して、またハッシュタグに戻ってほしい、というのが狙いですね。

―― 「胸焼けしてしまうでしょうから5ページ読んだら窓を開け......」とありました。たしかに、59名の芸人さんが並ぶとインパクトが強烈ですね(笑)

川島 Instagramは一か月一人くらいの更新だったんですけど、この本は見ようと思えば一気に全部見てしまうので。さすがに僕も吐きそうになる(笑)タグ酔いするというか(笑)ちょっとしんどいやろうなという懸念があったので、人間らしい血液を輸血しました。

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写真は、麒麟・川島明さん。

欲しかった自分だけの空間

―― 川島さんのInstagramはもともと旅の思い出や愛犬を載せた「平和なもの」だったそうですね。それがエアコン掃除の一枚に「#ポケモンの対戦画面か」、千鳥・ノブさんの差し歯が抜けた一枚に「#ドキュメントの最後のカット」というタグをつけて投稿したところ、思わぬ反響があったとか。

川島 僕はそもそも、まったく計算して芸人やっていないんです(笑)「こうやって生存していこう」「誰々のイスが空いているから狙おう」とは、本当にまったく思ったことがなくて。呼ばれたらがんばって行って、「これやって」と言われたらがんばってやる。弁当で言うたら漬物みたいな存在で、ハンバーグになれない人生なんですけど。

 でも、Instagramをやったらすごく反響があったんです。もともと一人で大喜利を考えるのがめっちゃ好きでコツコツやっていたので、どこかで発表したいなとは思っていました。もちろん「IPPONグランプリ」とかに出させていただくことでがんばれるんですけど、何か個人的な、自分だけの空間がほしかった。Instagramがその空間になってくれた、という感じですね。

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写真は、麒麟・川島明さん。

大喜利のベストアルバム

―― もともと大喜利を考えるのが好きだったとのことですが、表現することが得意だったり、言葉に敏感だったり、ご自分の中にその素質があると感じていましたか。

川島 いやいや。でも、小学生の頃から国語はめっちゃ好きでしたね。先生がすごくいい先生で。ふつう間違っていたら×、あっていたら○の世界ですけど。その先生は、テストで書いたことが正解と違っていても「これ、どういう気持ちで書いたん?」と聞いてくれました。「僕はこう思ったんです」と言うと、「なるほどね」と○をくれる先生やったんです。この先生に褒められたい一心で、国語はめっちゃ自主的に勉強しました。「言葉っておもろいな」と思っていましたね。

 それがもとになっているんですけど、やっぱりダウンタウン・松本さんの「一人ごっつ」(注1)という大喜利の番組を見たときに「大喜利って、めちゃくちゃおもろいんだな」と。18の時も毎日大喜利を考えていましたね。

(注1)「一人ごっつ」......1996年10月~1997年3月にフジテレビ系列で放送された大喜利形式のバラエティー番組。

―― 当時から訓練を重ねてきたものが、いまこうして本になって多くの人に喜んでもらえることは、感慨深いものがありますね。

川島 そうですね、やっぱり形に残るっていうのが嬉しいですね。芸人になって20年ぐらい経つんですけど、大喜利だけで言うと「集大成が出たな」という感じはありますね。ここに670個ぐらいボケが載っているんですけど、全部自分が納得のいくものなので。ベストアルバムになっています(笑)

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写真は、麒麟・川島明さん。

 第3回は、川島さんの「タグ大喜利」の源泉は何かを聞く。ぜひ、あわせてチェックしていただきたい。

■麒麟・川島明さんプロフィール

 1979年2月3日生まれ。京都府出身。97年、NSC大阪校20期生。99年、お笑いコンビ・麒麟を結成。ボケ担当。「M-1グランプリ」決勝に5回進出。「IPPONグランプリ」(フジテレビ系列)、「麒麟川島の#ハッシュタグバトルツアー」(読売テレビ)などでも大喜利のセンスを発揮している。

<この連載を読む ~麒麟・川島明に聞く~>

第1回「お笑いは心を救う! いまこそ『タグ大喜利』で笑おう!」
第3回「日常の違和感も『タグ大喜利』でフィクションに!」

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