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「あんな奴とは思わなかった」・・・人の人を見る目はあてにならない?

  • 書名 『HRプロファイリング 本当の適性を見極める「人事の科学」』
  • 監修・編集・著者名須古勝志、田路和也
  • 出版社名日本経済新聞出版

期待されて入社してきた新人がすぐに辞めてしまったり、次世代幹部候補が年々減少していたり、クビにならない程度に力を抜いてぶら下がる社員が増加していたりと、どんな会社でも多かれ少なかれ「人」の悩みを抱えている。

「なぜウチの人事は、優秀な人財を採用して現場に回せないのか」
こんなことを考えている経営者こそ、胸に手を当てて考えてみていただきたい。人は、経験と勘だけで、人の自社組織における活躍可能性を見極められるのか。

『HRプロファイリング 本当の適性を見極める「人事の科学」』(日本経済新聞出版刊)は人財の採用から配置・抜擢、育成に関わる問題に鋭く切り込み、これまで経営者や人事担当者の経験と勘が頼りだった人事に科学の光を当てる。

今回はこの本の著者である須古勝志さんと田路和也さんにお話をうかがい、日本企業の人事の現状と問題点についてお話をうかがった。その後編をお届けする。

■「自分には人を見る目がある」と疑わない経営者たち

――「ヒューマン・コア」とは、容易には変わらない、人の本性。「マインド」は変わりやすい心構えの部分だというお話がありましたが、企業側は社員や採用候補者のヒューマン・コアやマインドをどう把握していけばいいのでしょうか。

須古:その前に、まずは「自社で必要としているのはこういう人財」という、自社基準での人材要件モデルを作ることです。これがないことには、どんなに正確にヒューマン・コアを測定しても、自社における活躍可能性が全く解らないということになってしまいます。

私の会社で開発した「マルコポーロ」というアセスメントツールは、会社ごと、その中の組織分野や職位ごとに必要とされる人財要件を分析して、個々のヒューマン・コアと、どの程度の適合性があるか、その会社に入った後、活躍する可能性がどれくらいあるのかということがひと目でわかるようになっています。

――ツールを使わずに、面接などでヒューマン・コアを把握し、自社との相性を判断することはできないのですか?

須古:これまで何年も働いてきた社員の中から幹部候補を選ぶというのならまだしも、新卒採用ではまず無理でしょうね。もちろん科学は万能ではないのですが、それでも人間よりは精度が高いということは間違いなく言えます。

田路:面接では相手が嘘を言っているかどうかくらいは見抜けるかもしれませんが、限られた時間の中で、その人の内面の本質を見抜いて、どれほど自社で活躍できるのかを判定するのは至難の業でしょう。

特に中小企業で起こりがちなのですが、自分の人を見る目に自信を持っている経営者が、一方では「あいつがあんな奴だとは思わなかった」とよく言われています。人間が人間を見る目ってそんなものなんですよ。

――経営者が人を見る目に絶対的な自信を持っていると、なかなか人事や採用は変わらないかもしれませんね。

田路:何回も失敗しているのにね(笑)。小さな会社の場合、経営者は人の内面だけではなくて、その人に合った仕事の特性も見極めないといけません。両方見極められる人はあまりいないということでしょう。

須古:人は、自分と似たタイプの人を良しとする傾向もあるんです。だから社長が優秀だと感じた人を入れてみたら、同じタイプ同士でハレーションを起こしてしまってうまくいかないというケースはよくあります。「あいつは生意気だ」と(笑)。

――人事の現場で起きていることについても書かれていました。「学力と入社後の業績との間の相関・因果関係は低い」ということが明らかになっているのに、今また人を見極める方法として「学力系テスト」に回帰しているというのはおもしろい現象です。なぜこんなことになっているのでしょうか。

須古:先程お話ししたように、どんなに正確にヒューマン・コアを測定しても、会社側に「求める人材要件モデル」がなければ、単に「あの人はこういうパーソナリティの人」というのがわかるだけで終わってしまいます。このパターンがすごく多いんです。

会社側に人材要件モデルがないから、特性検査をして人の内面を測定しても、そこから先がない。そうするとどうなるかというと、特性検査の結果を見る時に、「ストレス耐性」でも「変革創造性」でも、「なんでも数値が高い方がいい」という考えになりがちなんです。

でも、たとえば「ストレス耐性」は、高ければ高いほどいいというものではありません。
ストレス耐性が高くなるほどタフで打たれ強い傾向が高まりますが、同時に人への配慮が欠けていき、「鈍感さ」が高まり、「事の重大さを認識できない傾向」も高まります。

逆にストレス耐性が低くなるほど、打たれ弱くなりますが、同時に繊細さが増していき、人の心の痛みを肌感覚で察知できる傾向や、気の利いた提案やクリエイティブな仕事に向く傾向が高まります。大勢の部下のやる気を引き出し、チームとしての成果創出を最大化できているマネージャーの多くはストレス耐性が高くはないという結果もレイル社では確認しています。

実際に自社において優秀な人財はどのような人財要件なのかを分析せずに、ストレス耐性は高い方が良いのだろうと根拠なく決めつけて特性検査の結果を見るという使い方は大きな間違いなのです。そして「点数が高い人を」という会社が、結果的にいい採用ができずに「特性検査なんて当たらない」と言い出してしまった。「それなら単なる学力テストの方が最低限のスクリーニングに使える」ということで学力系のテストに回帰しているのが現状です。

――ここまでのお話を踏まえると、今回の本を読むべきは、まず経営者ということになるのでしょうか。

須古:経営者もそうですし、戦略人事を名乗る人すべてに読んでいただきたいですね。「人事をコストセンターだと考えている経営者が多い」というお話がありましたが、本来、人事は「経営陣が立てた経営戦略を実現するために必要な人財を供給し続けること」がミッションで、経営を支える重要な部門です。このミッションに関わっていると思う人はぜひ読んでいただきたいですね。

――最後になりますが、人事や人財に悩む企業の経営者や人事担当者に向けてメッセージをお願いいたします。

須古:この本のメッセージはシンプルです。人には内面があって容易に変容はしない。しかしこれこそが人の行動の根源的な土台であるということです。

そして今は、これを正確に測定して自社の求める要件との適合性を判定できるようになった。つまり、採用厳選、配置、抜擢、育成に活用できるほどコントローラブルになったということ。だからこそ個にフォーカスし、個を活かす組織変革に向かって活用していただきたいということです。

組織の人財の真のポテンシャルを可視化し、経営陣の視界をクリアにする役割が戦略人事にはあります。経営陣の方は、戦略人事が科学という武器を使えるよう応援してあげていただきたいと思います。

田路:おそらく、「アフター・コロナ」の世の中では、採用も人財育成もそのあり方がこれまでとは大きく変わるはずです。新卒大量一括採用の形は崩れていくでしょうし、正社員・契約社員・派遣社員などの社内スタッフだけで業務を完結させるワークスタイルは確実に終焉するでしょう。それによって育成にも必ず影響が出てきます。従来の集合研修やO J Tのように、育成をシステム化していくことは難しくなり、個にフォーカスした育成がより必要になってくると思います。

その時に、部下のヒューマン・コアを上司や経営陣が把握せずに個別指導したところで、それは集合研修を個別にやっているだけなので、効果は見込めませんし、効率も悪いですよね。この本が個人の持ち味を生かすマネジメントや教育のあり方を考えるきっかけになってくれたらいいなと思っています。この本は、企業と従業員の双方がハッピーになる唯一の方法がまとめられている本だと自負していますので、多くの経営者、事業責任者、人事の方のお手元に届くことを願っています。

(新刊J P編集部)

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