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アラフィフ女性が経験した「人生が一変した」瞬間とは?

  • 書名 ママ、遺書かきました
  • 監修・編集・著者名波留 雅子
  • 出版社名幻冬舎

「書かないといられなかった」という理由からエッセイを書き出し、出版社に。
53歳の女性が人生の折り返しから見た自分の半生、家族、友人たち、そして時代の流れ。波留雅子さんの執筆したエッセイ集『ママ、遺書書きました』(幻冬舎刊)は、今を生きる一人の女性の姿がそのままに書き綴られている。

女性にとってアラフィフという年代は、ひと段落のとき。子育ても親の介護も落ち着いて、母や娘といった役割を一度降ろし、これからどう生きて行こうかと考える。そんな姿に、共感を抱く人も多いはずだ。
四字熟語をモチーフに、猪突猛進な自分を描いた本書。一人の著者として自分がどう見えたのか。雅子さんにお話をうかがった。

(新刊JP編集部)

■朝、布団の中で「本を書こう!」 そこから人生は一変した

――まず本作の執筆について、11月の3連休に書こうと思い立ち、その後とんとん拍子に出版に至ったそうです。とてもパワフルな感じで話が進んでいったように思います。本を書きたいと思うモチベーションはどこから湧いてきたのですか?

雅子:私は今年で54歳になります。子育ても終盤戦に差し掛かり、病気がちだった父を看取り、姑との別れを経て、時間がポッカリとあいて、何かしなきゃという思いがあったんです。そこで小料理屋をはじめようかと思っていたりもしていたんですが、すぐにお店なんて開けないじゃないですか。だからこの2年半、ずっと悶々としていたんです。

他にもソムリエ試験を受けたり、語学の勉強をしたり、スポーツジムに通いはじめたりもしましたが、結局は時間つぶしで、むなしさを感じていたんですね。
そんなときに、朝、布団のなかでもぞもぞしながら、「そうだ!書こう!」と決めて、そこからは猪突猛進です。自分の今までの人生を書き遺しておこうと思って書き始めたら止まらない。「これだったんだ、自分が求めていたものは」と腑に落ちた思いでした。

――それまでは本を書きたいと思ったことはなく?

雅子:はい、いっさいありませんでした。日記も書いたことがなかったですし...。でも、書きたいことがどんどん出てきて、四字熟語で整理していくというような感じです。

――おっしゃる通り、四字熟語がキーワードになっています。

雅子:四字熟語を使うことは、エッセイを書こうと思ったと同時に思いついたと記憶しています。同居している86歳の母の影響もあると思いますが、四字熟語に限らず、故事成語、ことわざは日々の会話の中で使っていました。

原稿の中で最初に書いたのが大器晩成、自画自賛、愛別離苦あたりですね。子育てといったら大器晩成、自分探しは自画自賛とか。四字熟語ってイメージが沸きやすいじゃないですか。二人三脚、馬耳東風、一期一会...。自分の凝縮した思いをなんとも端的に表せて、便利で面白い表現方法だと思います。

――お気に入りの四字熟語はなんですか?

雅子:自分の性格をあらわす「猪突猛進」「自由奔放」「波乱万丈」。あとは「一期一会」や、「ケ・セラ・セラ」をあらわす「行雲流水」も好きですね。

――本を執筆して新たに見えてきたものはありますか?

雅子:原稿を書き始めてから半年ですが、生活は一変しましたね。生きることの張り合いができました。それまでは、パート勤めはしているものの、長続きはしないし、どこか満足できなくて。でも、書くことに目覚めてからは、楽しい暇つぶしができたような感覚です。

――この機会を通して、パソコンの使い方とかも学んでいったんですか?

雅子:はい、そうです。パソコンの操作を沢山覚え、ブログ、note、ツイッター、インスタ、Facebookも。いっぺんに世界が広がりました。ブログは4月からスタートして、1ヶ月ちょっとで100記事書きました。もう、書くことは生活の一部、中心になっています。

この原稿を書いていた頃はコロナの騒ぎも全然なかったので、本編でそこには触れていないんです。でも2月以降、世界は一変しました。だから、編集者にお願いして、あとがきでコロナのことも触れさせてもらったんです。やっぱり本を書き上げて、まだまだ書きたいなと思うことが出てきたので、ブログやnoteという場を通して発表しています。

これからも、どういった形で発表できるかはわかりませんが、死ぬまで、ずっと書いていきたいと思っています。それこそ遺書を遺すつもりで(笑)

――この『ママ、遺書書きました』はご家族、それも4人のお子さんについて書かれている部分も多いです。できあがったゲラをお子さんは読まれていますか?

雅子:長女と次女は実は読んでいません。長女は本屋に並ぶのを待っているとのことで、次女はブログを毎日読んでくれています。2人が読まないのは、たぶん読んだら文句をつけたくなるからだと思います。私もその方が助かります(笑)。

末娘には、原稿が書けたそばから、読んで聞かせていました。しまいには「もういいよ」と嫌がられましたが、おおむね内容には「イイね!」をもらっています。

一人息子にはだいたい読んでもらいました。すごく一生懸命読み込んでくれて、たくさんアドバイスをもらっています。実は、何度も書き直しさせられたり...鬼編集者でした。辛口コメントはとても助かりましたね。この本の最後にエッセイを寄稿してもらったのですが、私のことを「奇想天外」と表現してくれて、嬉しかったです。

――タイトルの『ママ、遺書書きました』は家族からするとギョッとするような題名だと思いますが、そこに込めた思いは?

雅子:はじめは『四字熟語人生道場』みたいな感じかなと思っていたのですが、友人から俵万智さんの『サラダ記念日』みたいに文中からつければ?と言われて、良い言葉を探していたんですね。

そんなとき、遊びに来ていた友人の息子さんがこの原稿を読んで「ママ、遺書書こうかな」という一文にウケていて。あとは、「家書万金」というエピソードで書いていますが、昔から家族に向けて手紙を書いて、みんなを招集して読み聞かせていたことがありまして、よく「ユニークだね」と言われていたんです。

そこから『ママ、お手紙を書きました』というタイトルを考えて編集者さんに言ったら、『遺書かきました』のほうがインパクトあるのでは? と提案されて、このタイトルになったんです。

『ママ、お手紙を書きました』でもよかったのですが、でもやっぱりお手紙じゃないなと。命がけは大袈裟ですが、この本の執筆は、私にとっては一世一代の大仕事でしたので、やはり『ママ、遺書書きました』、これでよかったのだと思います。

――なるほど。「遺書」は「死」をイメージさせますがその点は?

雅子:実は、ここ7年の間に3人、身近な人をなくしています。同居していた父、姑、あとは主人の弟が病気のため52歳で突然。みんな、死が身近なんです。だから、これで「いつ死んでも言い遺したことは無いな」くらい、たくさんの思いを書き綴りました。

『ママ、遺書書きました』は子どもたちから反対が起こるかなと思っていましたけど、なかったので良かったです(笑)。

――ご自身のことを書き綴ってきて、自分の姿がどのように見えましたか?

雅子:究極のわがままだと思います(笑)。丙午、牡羊座、次女、ええ加減のA型で、好きな四字熟語が猪突猛進、自由奔放、波瀾万丈ですからね。

ただ、怒られることも争いごとも嫌いなので、したたかに立ち回るというか、カメレオンのように器用に色を変えて怒られないように自由に立ち回りたいと思っています(笑)。

――この本の中で気に入っている部分はなんですか?

雅子:50の項目に四字熟語をつけて、さらにキャッチコピー的なものを添えています。「呉越同舟」なら「キュウソネコカミ」、「自画自賛」なら「ナルシスト万歳」。あとは「大胆不敵」の「ツンデレ大好き」。あの部分は気に入っています。

――あの部分は、エッセイの風味を醸し出していますよね。雅子さんはエッセイを読まれたりしないんですか?

雅子:エッセイというよりも女流作家さんの小説はよく読みますね。感情移入がしやすいので。
林真理子さん、桐野夏生さん、山田詠美さん、窪美澄さん、恩田陸さん、野中柊さん、乃南アサさんといった方々の作品はよく読んでいます。

(後編に続く)

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