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独立系アドバイザーが提言!50代から始める資産運用で「債券」に注目すべき理由とは?

  • 書名 老後の大切なお金の一番安全な増やし方 シニア投資
  • 監修・編集・著者名西崎努
  • 出版社名アスコム

2019年に大きな話題を呼んだ社会問題の一つが「老後2000万円問題」だ。金融庁審議会の資料において公的年金以外で老後に2000万円必要になると報告され、若い世代を中心に波紋を起こした。

一方で現在50代、60代といったリタイアが近い世代にとっては、これから30年、40年と生きる上でいかに資産を運用していくかが喫緊の課題となる。

何度も資産運用セミナーに登壇し、2020年1月には東証JPXアカデミーでも講師を務めるIFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)の西崎努さんに、上梓したばかりの『老後の大切なお金の一番安全な増やし方 シニア投資』(アスコム刊)の内容を通して、シニア世代の投資術についてお話をうかがった。

(新刊JP編集部)

■シニアの投資は「儲けるよりも減らさない事」が重要な理由

――本書のタイトルにもなっている「シニア投資」とは、どのような投資術なのでしょうか。

西崎:まさに現役でずっと働かれてきて、もうすぐ定年に差し掛かるくらいの年齢の方が、稼いだお金や貯めたお金、場合によっては親御さんからご相続された大切なお金を活かす投資術になります。

退職後は年金中心の生活になりますが、お金を使っていると減っていきますし、持ち家の修繕や介護など、大きなお金を使うタイミングも結構あるんですね。だから、今ある資産を活かし、これから使う分くらいを無理しないレベルで増やしましょうというところがメインのメッセージです。

――本書を読むと、シニア投資は「限りある資金を減らさない」投資術だと言っています。

西崎:そうですね。大きく増やす投資術ではなく、できるだけリスクを抑えて「減らさない」ことを重要視します。

投資と聞いて「大きく増やして儲ける」と考える人は少なくないのですが、逆に資産が減るリスクもあります。例えば株であれば、この10年間は株式相場も堅調に展開していましたが、一方で大きな不況が到来して下がる可能性もあったわけです。

個人の状況やライフプランによっても変わってきますが、私たちは20代から40代の現役世代を「資産形成期」と考えています。この世代は基本的にまとまった資産がないため、自ら働いてお金を稼ぎつつ、将来のライフイベントや老後を見据えて資産を増やす投資が主流となります。働きながら資産運用をするので、ある程度の上がり下がりがありつつも、将来を見据えてお金を増やすことが大事です。

ただ、50代後半以降のシニアと呼ばれる世代の方々――「資産運用期」にいらっしゃる方々は、基本的に年金だけでは生活が難しいため貯蓄を切り崩すことになります。そういう生活の中で資産運用をすることになるので、運用で大きく失敗したときに取り返しが効かなくなるリスクがあるんですね。

――だから、「減らさない」投資術なんですね。

西崎:そうです。

――本書にはシニアの方々の投資事例集もありますが、ここに出てくる方々は5000万円以上の資産を保有している方です。シニア投資は、ある程度資産を保有している方向けの投資術になるのでしょうか?

西崎:お金が手元にない方は運用というよりも、働く期間を延長して収入を得ることや生活水準の改善が重要になります。投資というのは身銭を擲ってするものではなく、余裕資金の中で無理せずにすべきです。特にシニア世代は今後収入が増える事が考えづらいため、いざという時のために現金を用意しておく必要もあります。そうなると、ある程度お金に余裕のある人が対象にはなりますね。

額で言えば、2000万円は保有資産があったほうがいいと思いますね。そのくらいあれば余裕をもって資産運用ができるはずです。

――投資といえば「株」や「FX」などがよく聞きますが、シニア投資においては「債券」に注目すべきと書かれています。それはなぜでしょうか。

西崎:基本的に資産を増やす目的で運用するならば「株」です。ただ、先ほども申し上げたように、大きく儲かる可能性もある分、減るリスクもあるわけですね。そうしたリスクを抑える運用としてあがるのが「債券」です。

――債券という存在は聞いたことがありますが、投資の話題の中にはあまり出てきませんよね。

西崎:そうだと思います。日本証券業協会のデータを見ても、現在債券を保有している個人投資家は全体の13%程度です。

債券は、国や企業などが投資家から資金を借り入れる際に発行する証書のことです。つまり、国や企業にお金を貸し出すということなんです。だから満期がくれば満額返してもらえますし、貸している間は利子がつきます。

もちろん、金利や満期などの約束事をしっかり確認して選ぶ必要がありますが、株と比べたら安定性が高く、満期までは何もする必要がなく、保有中のコストもかかりません。

――なるほど。ただ、株よりもリターンが少ないことが多い。

西崎:株で儲かった場合と比較すると、ですね。値動きの幅が少ないので、安定運用をしたいときは債券というのが世界共通の考え方といえます。実際に運用となると、日本円では金利がほとんど付かないので、米ドル建ての債券が対象となります。その場合、現在は年間で3%ほどの利息が期待できるイメージですね。例えば100万円運用して年間で3万円ですから、そこまでリターンは大きくないですよね。もちろん為替の値動きも考えておく必要があります。

――債券は一度購入したら満期まで現金化できないんですか?

西崎:途中で現金化することもできます。でも、満期まで置いておくというのが、債券投資の基本です。

――債券の選び方でポイントがありましたら、教えてください。

西崎:本書にもチェックポイントをいくつか書かせていただきましたが、その一つとしては、どの通貨で債券を購入するか気を付けたほうがいいでしょう。

日本円でしたらもちろん為替の値動きはありません。米ドルは比較的一定の幅で動いて安定していますが、年間で±5%程度は動くことは考えられます。株式だと日経平均株価でも年間で±20%程度は普通に動きますので、比較すると値動きが少ないことがわかると思います。

ただし、トルコリラやブラジルレアルといった新興国通貨の債券は値動きが非常に激しいので、満期を迎えたときに為替相場が大きく下落している可能性があるんです。

また、債券の発行体が破綻するリスクもあります。なので、発行体でリスクを取りたくない場合は格付け専門機関の格付けを参考にしながら、「投資適格水準」に達した信頼性の高い発行体を選ぶべきですね。

(後編に続く)

■西崎努さん

リーファス株式会社 代表取締役社長。
2007年に日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社、CFP資格も保有する全国トップセールスとして活躍し、シンガポール・ロンドンでの海外研修も経験。帰国後は新規・既存の上場会社や不動産投資法人(REIT)の公募増資等の株式引受業務に従事する。2017年4月に独立し、リーファス株式会社を設立。同年10月に金融商品仲介業の登録を受ける。金融商品の仕組みはもちろん、運用実務、大手銀行や証券会社の販売手法まで熟知したアドバイスが好評。
日経新聞、楽天証券サイト「トウシル」などメディアへの寄稿多数。自身の経験をもとに「資産運用の本音セミナー」を年間40回以上開催(2019年実績)。2020年の新春企画として東証「JPXアカデミー」にて講師として登壇予定。

株式会社オトバンク「新刊JP」

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