子どもを育てる親であれば、子育ての楽しさやすばらしさとともに、その難しさも日々感じるもの。
夫の不倫スキャンダルにはじまり、二度の離婚。
子育ての環境についていえば、女優の松原千明さんは常に逆境の中で戦ってきた。
数多の困難を乗り越え、現在女優として活躍する娘・すみれさんを育て上げた軌跡とは――。
■石田純一「不倫は文化」発言で娘・すみれが受けた災難
松原さんの最初の夫は、俳優の石田純一さん。“平成のモテ男”として名を馳せた彼には、結婚後しばらくして、女性の影がちらつくようになったという。
彼がおつきあいしている女性のお父さんから電話がかかってきたときも、精神的にはきつかったですね。「お宅のご主人とうちの娘を別れさせてくれ」と。そのときは、そのお相手のおうちに彼と一緒に謝りに行きました。(『ただ、愛した』P30より)
そんな石田さんといえば「文化や芸術といったものが不倫という恋愛から生まれることもある」という「不倫は文化」発言があまりにも有名だが、この発言が出た時、石田さんと松原さんは夫婦だった。
そして1996年秋。当時、娘・すみれさんは、小学校受験を控えた大切な時期だった。この報道が出たのは受験のまさに前日だったという。そのうえ、
スキャンダルの渦中にいる彼が、すみれの面接に現れたのです。当然、面接への影響を考えると来ないものだと思っていました。“それまで何か月も家に帰ってこなかったのに、どうしてこんなときに限って”と、私は憤りを覚えました。(『ただ、愛した』P6より)
松原さんはこの頃のことを著書『ただ、愛した』(扶桑社刊)でこう書いている。というのも、私立小学校の入試は両親にも面接が課されるケースが多く、このスキャンダルの影響は避けられないからだ。
さらにこの件では、松原さんばかりでなくすみれさんにまで取材が殺到。受験どころではなくなり、すみれさんは結局公立の小学校に通うことになった。
その後、マスコミを避けるため、そしてすみれさんが小学校でいじめを受けたこともあり、母子二人でハワイに移り住んだ。そこで出会った男性と結婚し、二人目の子どもとなる達也さんを授かったが、二度目の結婚生活も8年で破局を迎えた。
二度の結婚を通して、男性に翻弄されつづけた松原さん。子育ての環境という意味でいえば、決して恵まれたものではなかったはずだ。そんな中でも松原さんは二人の子どもを精一杯育て、それによって自身も生きる力を得ていった。
「とにかくママはめちゃめちゃ強い。愛している人に裏切られて、それを日本中の人に知られちゃって、パパラッチが連日家に押しかけてきて。普通の人だったら、生きていられないぐらいの状況じゃないかな」(同・P190より)
と、同書の母娘対談ですみれさんが語るように、『ただ、愛した』には、松原さんの子育てについての思いや考え方、男の子も女の子も育てた経験談、そして逆境をいかに乗り越えていったかが綴られている。
つかず離れず、彼女が私を必要としているときは、いつも守り、そばにいます。それ以外はただ見守り、支え続けたいと思います。(同・P198より)
愛情を注ぎながらも「子どもべったり」にはならず、適度な距離感を保つその子育て方法は、親にとって学ぶところが多い一冊である。
(新刊JP編集部)
『ただ、愛した』(扶桑社刊)