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究極の「売り手市場」に 人材採用の最前線

  「時給を上げても応募がこない」「学生が減ってバイトが集まらない」「求人難から店舗が閉鎖へ」労働の現場では、今まさにこんなことが起きている。未曾有の採用難の時代なのだ。労働力不足の状況が好転することを期待しがたい事実も存在する。 国の統計データによれば、35年後の日本の生産年齢人口は2000万人以上も減るといわれており、労働者の絶対数の減少も採用市場に影響を与えると考えられるからだ。こうしてみると、日本の労働環境にはネガティブな要素ばかりが揃っているように思えてくるが、明るい兆しもないわけではない。
 20年にわたって3000社以上の人事採用・組織コンサルティングの仕事を手がけてきた武井繁氏の著作を読むと、この時代の変化を前向きにとらえ、生き抜くための模索をはじめている企業があることがわかる。
 『潜在ワーカーが日本を豊かにする―――シニア、主婦(夫)、外国人……多様な働き方が救世主となる』(武井繁/著、ダイヤモンド社/刊)は、企業が人事・採用活動に関して、「これからどうしていくべきか」を考えるヒントを与えてくれる。 タイトルにもあるように、本書では「潜在ワーカー」として、シニア層、主婦(夫)、在留外国人といった層に着目し、これからの日本に欠かせない労働力として期待を寄せている。またこの層の活用にあたり、企業側が就労側のニーズや特性をどう汲みとっていくべきかという重要な課題についても言及されているのが興味深い。 特に目をひくのは、「『長時間労働のマルチプレイヤー』ではなく『短時間労働のスペシャリスト』を」という提言だ。従来型の「企業にとってのみ都合の良い雇用形態」にこだわっていると、潜在ワーカーの活用はままならない。雇用者が会社のスタイルに合わせるのではなく、雇用者の生活スタイルや条件に会社が柔軟に合わせていく必要性を訴えるこの提言は、企業が重い腰を上げるきっかけになるかもしれない。
 また『時代を勝ち抜く人材採用』(武井繁、米田光宏/著、ダイヤモンド社/刊)は、「考える」「集める」「選ばれる」「活かす」という4つの切り口から、企業の人事・採用担当者がいま何を考え、何を実行すべきなのかを分かりやすく解説している。それぞれ実際にあった成功事例が紹介されてもいるので、具体的なイメージがわきやすいだろう。 たとえば、セブン‐イレブン・ジャパンについては約20ページにわたって詳細な解説がなされ、このような有名企業でさえ人材の確保には相当な苦労を強いられていることが伝わってくる。 採用活動の改善策として、求職者の応募に対応するためのコールセンターを設置し、応募の電話が鳴れば「3コール以内」で受話器を取ることを徹底するなど、有望な人材を採り逃さないための工夫が定着している。企業が求職者を「選ぶ」時代から、企業が求職者に「選ばれる」時代へ。セブン‐イレブン・ジャパンの取り組みはこの変化に対応するものだといえるだろう。
 求職者が会社を選ぶ時代に、会社は何ができるのか? どちらの著作も、多くの現場を見てきた武井氏ならではの視点で豊富な事例が紹介され、人材採用において貴重な視座を与えてくれる。(新刊JP編集部)

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