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芥川賞受賞作 誕生の秘密を語る

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 第56回目の今回は、「穴」(『穴』に収録、新潮社/刊)で第150回芥川賞を受賞した小山田浩子さんです。
 「穴」には、田舎に移り住んできた主婦「あさひ」の前に時折現れる、日常の中の「異界」が描かれています。善良な人々と、普通の風景、だけど何かがおかしい!?
 この違和感の虜になったら、もう引き返すことはできません。
 各方面から絶賛を集めるこの作品の原点はどんなところにあるのか。授賞式翌日の小山田さんにお話を伺いました。

■いまだに毎日驚いている芥川賞受賞
―まずは、芥川賞受賞おめでとうございます。昨日は授賞式でしたが、受賞挨拶はいかがでしたか?

小山田:ありがとうございます。直木賞の受賞者の方もいるなかで、私がトップバッターだったので緊張しすぎて……。

―スピーチは新潮新人賞を受賞した時以来ですか?

小山田:新人賞の時はパーティの類はなかったんです。大勢の前でカメラを構えられて、というのは初めてですね。

―芥川賞といえば、世間の注目度がとても高い賞です。作家をされていると、やはり多少なりとも意識してしまうものなのでしょうか。

小山田:私はまだ全然実績がありませんから、意識したということはないです。5年後、10年後というお話でしたらいつかは取りたいなと思っていたはずなのですが、今だとは思っていませんでした。受賞の知らせをいただいてから一ヶ月以上経ちましたが、いまだに毎日驚いています。
昨年、織田作之助賞をいただいた時も、「まさか自分が」という感じでしたし、「欲しいからください!」というのはなくて、私がいただいてしまって本当にいいんだろうかというのが正直な気持ちです。

―「穴」はコミカルさと不気味さが同居した不思議な作品です。この作品を構想した時に原点となったアイデアはありますか?

小山田:特にこういう出来事があって、ということはないのですが、「嫁」をキーワードに書いてみよう、というのはありました。それと、この作品を書きはじめた時期は夏だったので、その夏の暑くて嫌な感じ、べたべたする湿気だとか、草の匂いなどが作品に表れて、読んでくださった方がそれぞれの体験した夏を思い出してくれればいいなと思いました。その2つですね。「嫁」と「夏」。

―「嫁」というのは確かに変な言葉ですよね。誰を指すものでもないですし。

小山田:そうなんですよね。役割を指すわけでもないですし、特定の一人を指す言葉でもない。世帯によっては「嫁」が二人いるところもありますからね。そういうところで不思議な言葉だな、と思っていました。

―この小説の舞台になっている「山間部の近く」ではないのですが、私も田舎育ちなので、作中で描かれているような、「平日の日中の田舎」の雰囲気にはとても共感しました。人が少なすぎて現実感がないといいますか……

小山田:私は広島出身なのですが、特に夏などは、ニュースで高温注意情報が流れるともう道に誰もいなくなっちゃうんですよね(笑)。「歩いちゃいけない道なのかな?」と思ってしまうくらい。ちょっと薄気味が悪い感じはします。

第2回 「“穴”と“獣”でバラバラの断片がまとまった」に続く

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