世の中の営業マンにとって、目標達成は第一。しかし、このご時世なかなか上手くいかないことのほうが多いでしょう。そんな中で「お金持ち」、いわゆる大口顧客は絶対に手離したくない存在です。
では、「お金持ち」を口説き落とすにはどうすればいいのでしょうか? そんな悩みに回答してくれるのが、『営業マンはお金持ちをねらえ!』(日本経済新聞社/刊)。著者の掛越直樹さんは大手都市銀行で富裕層ビジネスに参画し、3000人もの富裕層の方々と面談した経験があり、まさに“富裕層キラー”といっても過言ではありません。
今回はそんな掛越さんにインタビューを行い、「お金持ち」の人々について聞いてきました! 前後編の今回は前編をお送りします!
―本書はお金持ちに対してどう営業すればいいのかという、とてもユニークなテーマで書かれています。これは掛越さんご自身の、大手都市銀行で富裕層ビジネスに参画したという経歴がバックボーンにあると思いますが、そのときのご経験を本書にまとめていらっしゃるんですね。
「そうですね、おっしゃる通りです。私は7年間大手の都市銀行で富裕層ビジネスに参画いたしました。そこで金融資産1億円以上の富裕層の方、約3000人と面談を行い、そのときの経験をふまえてこの一冊をまとめました」
―その7年間が詰まった一冊なんですね。
「凝縮していると言っても過言ではないかと思います」
―たくさんの富裕層の方々と対談されてきた中で、高収入を得ている方々に共通している点はあるのでしょうか?
「私が担当もしくは面談させていただいたお客さまは、紳士もしくは淑女の方ばかりでした。例えば、自分がお金持ちであることですとか、高い地位にあることをひけらかしません。それは、どの富裕層の方々もそうです。私に対しても腰が低くて、とても謙虚でいらっしゃいますよ」
―「お金持ち」のイメージというと、一般的には「傲慢そう」ですとか、「えらぶっている」というようなものが浮かびます。
「私が担当もしくは面談させていただいた方々は、人生経験を積まれていらっしゃる方が多かったというのはあるかも知れませんね。やはり、たくさんのことをご経験されてきたので、自然に謙虚になりますし、社会のマナーに厳しい方が多かったです。また、お取引をしていても、とても気を遣っていただいていて、トラブルになることもほとんどありませんでした」
―掛越さんが面談されてきた富裕層――本当のお金持ちの方と、そうではない方の違いはどのようにすれば見抜くことができるのですか?
「例えば、顔を向き合ってお話しをしますよね。普段お金を持っていなくて、急に大金が入ってきた方は、そのような状況に慣れていらっしゃらないので、少しおどおどしている感じがします。自分の発言に自信がないからだと思います。
また、そうでない方のほうがクレームになりやすいですね。些細な言葉の取り違えで、『ぞんざいな態度をされた』と言われることもあります」
―富裕層とひと言で言っても、さまざまな職種や業種があり、どのように財をなしてきたかは人それぞれだと思います。本書では相手の業種別のキラーフレーズを紹介されており、とても興味深く読ませていただきました。ここで、少し具体的にクロージング(成約)に結びつけることができる効果的な方法を教えていただけますか?
「もちろん業種によって違いますが、例えばお客さまが医師の方であれば、その方だけの特別なサービスがありますとご提案すれば、お客さまの心を惹きつけることができると思います。ただ、一つ気をつけていただきたいのは、特別なサービスがありますがいかがですか? とご提案したあとに、間を取るということです」
―それはなぜですか?
「早く成約させたい気持ちはよく分かります。しかし、お客さまに考える時間を与えずに急かしてしまうと、トラブルになる可能性が高くなるのです。そして一度失敗したら、その方との信頼関係を取り戻すことは困難でしょう。お取引はそのときだけではなく、その後も続いていくものですから、その機会を逸するということは大きな失敗になります」
―そのために間を取るということが必要なんですね。
「そうです。ご納得して決めていただくことが大事なのです。私は、その時に決まらなくても良いと思っています。後日成約できればいいのですから」
―では、富裕層の方々と、そうではない一般的なお客さまの営業の方法にはどんな違いがあるのですか?
「面談時においては基本的には変わりません。一番違う部分は面談までの準備ですね。どんな質問が来ても回答できるようにしておいたり、マーケットの動向を把握しておいたりするのは当然のことですが、お客さまが普段どのようなお仕事をされて、どのような生活をしているのか調べて想像することが大事です」
―そうなると、準備にかける時間は増えますね。
「そうですね。でも、大変だったという記憶はありません。準備をしただけ、結果が出ることをわかっていましたから、当たり前のようにしていましたね。やはりお客さまとの信頼関係が何より大事なのです」
―準備ができていないと成果をなかなか出すことができないということになります。
「そうだと思います。闇雲に営業をしているといいましょうか、同じ営業方法を繰り返していても成約は難しいと思いますね。人それぞれ違うわけで、当然一人ひとり違ったご提案をすることが大切です。お客さまのことを考えた営業をすることが大事だと思います」
(後編に続く)
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