「大伴昌司」の名前は知らなくても、1960年代後半~70年代前半に少年時代をすごした人なら、彼の仕事を一度は目にしたことがあるに違いない。そう、彼こそ当時一大ブームとなった「ウルトラマンシリーズ」に登場する怪獣の体内図解を発表し、「怪獣博士」の異名で親しまれた稀代の天才ジャーナリストである。
大伴は、怪獣をテレビの中だけのフィクションととらえず、どんな能力や弱点があるかなど、その能力の謎を解明すべく詳細なデータを示した上、体内を解剖図解し、紹介して見せた。
本書では、大伴昌司が描いた怪獣図解の下図の一部が紹介されている。細かなディテールにもこだわって設定した、遊び心満載の怪獣図解の世界が楽しめる。
そして大伴の名を知らしめたもう一つの業績である「大図鑑」の魅力も紹介されている。
大伴は、少年雑誌の巻頭特集ページで特撮、CM、劇画、アート、SF、妖怪、大阪万博など、サブカルチャー的なテーマを取り上げ、イラストやグラビアを使って、ビジュアルに展開。当時の少年たちは、学校では決して教えてもらえないような、最先端の情報や知識をこの特集で得ることができた。
この大図解における大伴の奇抜な着眼点と先駆的なビジュアル構成は、今日のヴィジュアル・ジャーナリズム文化の基礎を築いたといえよう。
書名:怪獣博士!大伴昌司『大図解』画報
著者:堀江あき子
出版社:河出書房新社
定価:1890円