高齢化社会ということで、世の中には多種多様な健康本があふれている。本書『女は筋肉 男は脂肪』 (集英社新書)もその一つだ。ふつうの健康本は、年齢別、世代別に食事や運動、病気の早期発見などについて説いていることが多いが、本書の大きな特徴は男性と女性に分けて考えていること。男性と女性では平均寿命も違うし、かかる病気も異なる。それゆえ、「性」の違いに合わせた健康対策が必要だとする。
日本人の2017年の平均寿命は女性が87.26歳、男性が81.09歳。いずれも過去最高を更新している。男女差は6.17歳。かなりある。女性の方が長生きというのは世界的な傾向だ。
その理由についてはいろいろな研究がある。男性は女性に比べて飲酒や喫煙の率が高いことなどはすぐに思い当たる。外にいる機会が多いからか、事故で死ぬ確率も男性の方が高いらしい。
病気やケガなどで自覚症状があるひとを「有訴者」という。本書によると、有訴率は女性の方が高く、通院率も女性の方が高い。女性の方が自分の体調管理に敏感だといえる。
かかりやすい病気の違いについても記されている。男性に多い疾患は、高血圧症、糖尿病、狭心症・心筋梗塞、痛風、脳卒中、腎臓の病気など。女性に多いのは、腰痛症、脂質異常症(高コレステロール血症など)、肩こり症、骨粗しょう症、関節症、甲状腺の病気、関節リウマチなど。確かにずいぶん違うなと実感する。
死因は男女で多少順位は異なるが、ともに悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患、肺炎、老衰が上位を占める。ただし、心筋梗塞などの心疾患は、男性の場合30~40代から発症する可能性が高まるのに対し、女性の場合は50歳を過ぎたころから。これは女性ホルモンのエストロゲンが、血圧や、悪玉コレステロールの血中濃度を下げる作用をすることが影響しているとみられている。がんの死亡数や死亡率も男性が女性を上回る。これらの病気の発症時期や発症率の違いが平均寿命にも反映しているようだ。
本書の構成は以下。
第1章 男女の健康問題を比べてみる 第2章 体力・運動能力の男女差はなぜ生まれるか 第3章 遺伝や環境は男女の体にどのような影響を与えるか 第4章 今、気にすべきは女性は「筋肉」をつける・男性は「脂肪」を減らすこと 第5章 筋肉を増やす運動・内臓脂肪を減らす運動 第6章 健康効果を高める栄養と食事パターン
男性と女性では、かかりやすい病気はもちろん、筋量、持久力、柔軟性、脂肪量などでも多くの差異があるという。本書はそれらのデータを基に説明する。
結論として著者が強調しているのが「女性は筋肉をつけること、男性は脂肪を減らすこと」だ。そうすることで、健康な状態で寿命を延ばすことができるというわけだ。具体的に、筋肉を増やす運動・内臓脂肪を減らす運動、そして健康効果を高める栄養と食事パターンも詳細に解説している。
筋力を高める万能トレーニングといわれるスクワットの正しい方法や、椅子に座ったまま体幹を鍛えるトレーニング、腰やひざの柔軟性を取り戻すトレーニング、正しいウォーキングなどは図解入りで説明されているので参考になる。
著者の樋口満さんは1949年生まれ。早稲田大学スポーツ科学学術院名誉教授。専攻は、健康増進に関する運動生理・生化学、スポーツ栄養学。第20回秩父宮記念スポーツ医・科学賞功労賞を受賞。編著書に『体力の正体は筋肉』『からだの発達と加齢の科学』など。
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