「寝たきりにならないために」などとして特に中高年向けに、ウオーキングの勧めがしばしば強調される。だが老いが進めば歩くこともままならなくなることもある。本書『長生きしたければ股関節を鍛えなさい』(幻冬舎)は、寝たきりにならないために行うウオーキングを続けるにはどうすればよいかを示したもの。それは、タイトルにある通り股関節を鍛えることだ。
股関節は胴体部分と脚の間にある人体のなかで最大の関節。歩く、座る、立つなど、日常で欠かせない動作のすべてにかかわる要の役割を担う。それだけに負荷も大きく不調に陥りやすく、それが腰やひざの痛みを引き起こすことにもなるという。本書には1日3分続けることで改善が期待できるストレッチ法や、股関節に負荷をかけない歩き方などのほか、栄養や休養についてもアドバイスが示されている。
著者は人工股関節の置換手術を専門にしている整形外科医。股関節に不調や悩みを持つ患者を年間1000人診察しており、その経験から、健康の改善や老化対策にとって、股関節に対するケアが大切であることをアピールしている。
「一般的なイメージだと、腰やひざの方が股関節よりも傷めやすいように思われるかもしれない。しかし、股関節にかかる負荷の大きさは、総じて腰やひざの関節にかかる負担よりも大きい」と著者。股関節には、普通に歩くだけで体重の3~4.5倍、ジョギングで4~5倍、階段の上り下りで6.2~8.7倍の負荷がかかるという。体重60キロなら、歩いている時には180~270キロの重さを支えていることになる。これに対し、歩くときにかかるひざへの負荷は体重の2.8倍、体重60キロで約170キロ。
股関節には普段から非常に大きな負荷がかかり、ほかの関節に比べれば酷使されている状態。だから老いの兆候が最初に現れる場所になりやすいという。だから、ただ歩くだけでは老いを加速するだけになりかねず、健康のため歩くには、股関節のトレーニングを考えなければならない。
ところが、関節は骨と骨の接合部に過ぎないので、関節自体を鍛えることはできないと著者。痛みが出ないため、あるいは、痛みが出たあとの悪化を抑えるために、また大きな手術である人工関節置換手術を避けるために、行うべきは、筋力訓練とストレッチ体操という。
人間の筋肉量は40代から低下が始まり、40歳から年に0.5%ずつ減少。65歳を過ぎてから減少率が増大し80歳までに30~40%の低下がみられるという。こうした加齢による心身の低下や後退を補おうと著者は患者のリハビリテーションを行うなかでトレーニングを体系化、本書ではその方法も具体的に示されている。著者はその効果をこう述べる。
「股関節自体は鍛えられない。しかし、股関節を取り巻く筋肉を鍛えることならできる。そうすることで、股関節はしなやかになり安定して動くようになる。結果として、これが、股関節を守ることになり、健康維持や老化防止につながる。そればかりではない。筋肉の強化は、すでに痛みがある場合には、痛みをやわらげ、機能障害を改善することにも有効に働く」
高齢者が歩行能力を落とす最大の理由は筋肉量の減少。下肢の筋肉量の加齢による減少率は、上肢や体幹に比べて高く「加齢→筋肉量低下→歩行能力低下→健康低下という負の連鎖が起きている」。著者は、加齢は避けられないが、筋肉量低下は防げることを強調。ウォーキングは健康によいことは明らかだが、それを続けるためには筋肉ファースト。
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