1回現金を使うと1敗。そんな縛りを自分に課して生活してみたら、どうなるのだろう? ビジネス書の著作家・美崎栄一郎さんが書いた『キャッシュレス生活、1年やってみた』(祥伝社)は、面白い体験記であるとともに実用的な電子マネーの指南書である。
昨年10月からの消費税10%導入をきっかけに、買い物の際に現金をなるべく使わないようにしている人は多いだろう。キャッシュレスだと、2020年6月まで店や商品によって、5%または2%のポイント還元を受けられるからだ。
自称「仕組みフェチ」の美崎さんは、2018年12月のペイペイ「100億円あげちゃうキャンペーン」終了後、キャッシュレスのビジネスモデルとその裏側を知ろうと、2019年元旦から、キャッシュレス生活に挑戦した。
最初に困ったのが、神社のお賽銭だ。調べてみると、東京・港区の愛宕神社では電子マネーの楽天Edy(エディ)が使えるという。賽銭箱の近くに端末が置いてあり、金額をテンキ―で入力し、カードをかざし、チャリーンと支払った。
足りない年賀状を買い求めるにも、郵便局は現金しか使えないという難題がすぐに現れた。これにはクレジットカード機能付きのファミマTカードが対応した。切手やはがきなどの金券類はふつう現金でしか買えないが、ファミマTカードであれば、ファミリーマートで扱う金券類はクレジットカード決済出来るのだという。
こんな調子で、1年間の体験を綴っている。電子マネーに新規で現金チャージするのはNGという自分なりのルールを決めたので、どうすればキャッシュレスでチャージするかという課題も生じた。
海外では台湾、フィリピンなど現金しか使えないことも多く、連敗を重ねた。その分、日本では「敗けない」ようにしていた。ラーメン屋は現金しか使えない店が多いので、好きなラーメンも我慢していたが、思わぬところで最初の「敗北」を喫した。
場所はキャッシュレスが進んでいるコンビニだった。セブンイレブンの発行するクレジットカード(セブンカード・プラス)から電子マネー・ナナコにオートチャージをする設定にした。設定後24時間たてば大丈夫と、ナナコを出すとまさかの残高不足。仕方なく現金でチャージした。75日目の不覚だった。少しタイムラグがあったらしい。
国内では、その後も鹿児島港からのバス、松山空港へのバスなど、地方の交通機関や東京の近所の医者など、現金にしか対応していないケースで17敗した。1分けというのがあるが、これは映画館のコインロッカー。100円玉は返却されたので、払ってはいないけれど使ったので引き分けにした。
地方ではクレジットカードも交通系カードも使えないタクシーが多い中で、ペイペイだけは使える車もあった。「QRコードのシールを運転手の後ろに貼っておけば良いだけ」という設備投資のかからなさが要因と見ている。
この体験記が第1章で、第2章は、電子マネーなどのお得な使い方を解説している。美崎さんは、2024年からの新札導入で「日本のキャッシュレス化」は加速すると見ている。なぜなら、新札対応へのコストを抑えるため、ATMや券売機が減る一方、現金が使えない自販機が増えるからだ。
イオングループの電子マネーWAONのかなりお得な使い方、ペイペイが優遇するヤフーカード、dカードは最強である、など各社のカードの利点をそれぞれ解説している。
ところで、どのペイが結局得なのか、1年間やってみた結論も書いているが、それは本書で読んでもらいたい。軍資金がたくさんある会社がより還元率が高い、とだけ書いておこう。
中国では2つのQRコード決済サービスが普及しているため、スマホさえあればお金に困らないようになっている。財布を持たないのが現実になっているのだ。
本書の第1章に書かれた美崎さんのキャッシュレスをめぐるエピソードも、やがて笑い話になる日も近いだろう。
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