2019年9月27日の朝日新聞朝刊3面の書籍広告に面白いクイズが載っていた。
「面積が7777平方キロの都道府県は?」 「1923年以降、地震発生回数が日本一少ない都道府県は?」 「すべての市町村に温泉がある唯一の都道府県は?」
さて、あなたは答えられるだろうか。
この奇妙なクイズのタネ本が、本書『47都道府県の歴史と地理がわかる事典』(幻冬舎新書)である。
著者の伊藤賀一さんは、リクルートが運営するオンライン予備校「スタディサプリ」で、高校日本史・倫理・政治経済・現代社会、中学地理・歴史・公民の7科目を担当する「日本一生徒数の多い社会科講師」だ。いわば「社会科のオールラウンダー」。またこれまで、47都道府県すべてを訪れ、関東以西を中心に10か所ほどで実際に暮らし、20以上の職種を体験してきたので、実に見聞が広い。
その経験をもとに、47都道府県の歴史・地形・気候・産業・文化など教科書に出てくる内容から、出身有名人、最新のご当地ネタなど教科書には出てこない内容まで、すべて盛り込んだ一冊だ。
評者もこれまで東北、関東、中部、関西の9都府県に住み、20回の引っ越し経験がある。行ったことがないのは長崎県だけなので全国各地の土地勘はある方だ。少しいじわるな眼で本書の記述を点検したが、相当つくりこんでいることが分かった。
一種の事典なので、本書を要約することは出来ない。どんな項目が書かれているかというと。
地理 地形、気候、特産 歴史 各都道府県の成立まで、県名の由来 学校 有名高校、大学 経済 交通、企業、行事・祭り 出身有名人 ご当地の話題 方言、鉄板ネタ
地理や歴史については、さすが「日本一生徒数の多い社会科講師」だけに、それぞれ手際よくコンパクトにまとめてある。
各都道府県の地雷ネタや鉄板ネタも紹介している。たとえば、北海道の地雷ネタは距離感覚。釧路~札幌間は東京~名古屋間と同程度離れているので、帰省者に「ちょっと札幌寄って〇〇買ってきて」はNG。
静岡県は年代構成や世帯当たりの消費支出額が日本の平均に近く、テストマーケティングの最適地であることは同県の鉄板ネタ。
同じ県でも江戸時代の藩に由来する地域対立の感情が今も残っていることにも、各地で触れている。出張や商談のネタにもなるだろう。
一時、道州制の導入が叫ばれたが、いつの間にか消えてしまった。しかし、伊藤さんは「少子高齢化による人口減少で、47都道府県はもう維持できないかもしれない――日本の地方について、悲観的な見通しが語られることが増えました」と危惧する。その上で、「都道府県は日本の宝だ」「日本の地方には、まだまだ凄い力がある」と訴える。
事典なので、どこからでも読んでいい。自分の住んでいる県でも知らないことは多いはずだ。一冊あれば当分飽きないことを保証する。
ちなみに冒頭のクイズの答えは、上から順に静岡県、佐賀県、山形県。
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