人生100年時代、健康寿命を長くすることが求められている。そのカギは「口」を意識することだ、と本書『口がきれいだと、健康で長生きできる』(株式会社KADOKAWA)の著者の医師、古舘健さんは訴える。
がん、認知症、脳梗塞、心筋梗塞、誤嚥性肺炎などの病気は口から入り、多くの突然死は口から防げるというのだ。
古舘さんは1985年青森県生まれ。北海道大学歯学部を卒業後、平均寿命が全国ワースト1位の青森県に戻り、地域医療に携わった。歯科医師として年に2千人の患者の口の中を診るうちに、「口から病気になる人が多い」と確信するようになったという。現在はアメリカのMDアンダーソンガンセンターでゲノム研究に取り組んでいる。
青森県にいたころ調べたら、購入金額で青森県が日本一のものは、コーヒー飲料、炭酸飲料、カップ麺、つゆやたれ、ソーセージ、チューハイやカクテルだった。これらに共通するのは「あ」がつくことだ、と説明する。
砂糖入りのコーヒー飲料、炭酸飲料=糖類が多い「あ」まいもの カップ麺=脂質が多い「あ」ぶらっこいもの つゆやたれ、カップ麺、ソーセージ=塩分が多い「あ」じが濃いもの チューハイやカクテル=「あ」ルコール飲料
これらのものが生活習慣病を引き起こすリスクを高めることはよく知られているが、問題は「よく噛まなくてもよいものが多い」ことだ、と指摘する。よく噛まないと脳が満足しないので食べ過ぎになりやすいとも。
「よく噛む」とは「1口30~40回、正しく噛む」ことだ。「正しい」噛み方とは、唇を閉じて、噛みながら頬や舌をモグモグ動かすこと。そんなにたくさん噛まないといけないのか、と驚くだろう。よく噛むと、消化管のホルモンが分泌されて、胃液や膵液などの消化液がたくさん出る。また消化管の血流もアップするので、消化しやすくなる。よく噛まないと栄養を十分に吸収することもできない。「点滴で栄養補給を続けていると、栄養を吸収する腸が委縮して、栄養を吸収できなくなってしまうことがある」という記述に、評者は先日老衰で亡くなった母親の最期を思い浮かべた。なるほど、そういうメカニズムかと。
本書はよく噛むことのできる歯を維持するための歯ブラシ2本を使った二刀流の歯磨き法や口呼吸の危険性などについて詳しく解説している。だが、最も蒙を啓かれたと思ったのは、第1章の「だ液アップエクササイズ」だ。「だ液は健康を守る『門番』」と言い切っている。薬の副作用、ストレス、生活習慣などにより「口が常にかわいている」ドライマウスの人は約800万人いるという。そのリスクを以下のように挙げる。
1 むし歯だらけになる だ液にはむし歯の原因になる酸を無効にする中和機能や、初期のむし歯を直す再石灰化機能があるから 2 口臭がきつくなる だ液のもつ抗菌機能が発揮されず、原因となる細菌が増えるから 3 窒息や肺炎の危険性が高まる 抗菌機能のあるだ液が減少していると誤嚥性肺炎になりやすくなるから
本書ではだ液を増やすエクササイズを紹介している。さらにカラオケにも効用があるという。「口を動かすと、動かしていない時の約10~20倍だ液が出る」からだ。
さらにすぐ簡単に出来る方法を紹介している。大切な人をイメージして「ありがとう」と声を出すことだ。口を大きく開けて、はっきり発音するとエクササイズにもなる。
むし歯の予防についての本はこれまでもあったが、だ液や歯の噛み方などにスポットを当てた本は珍しい。これまでほとんど意識していなかった「口」の重要性に思いあたった。
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